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《全レベル対象》
美術系大学・専門学校進学についての番外編2回目です。
今回はアニメやマンガ、イラストなどが学べる関連学部を持つ美術系の大学や専門学校へ進学するメリットとデメリットについて考えてみます。
将来はマンガやアニメの絵を描く仕事がしたいけど…
進学するなら美大か専門学校、どっちがいいんだろう?
マンガやアニメを学ぶ最適な学校を選ぶのはとても悩ましい問題だと思います。
大学(私立と国公立)や専門学校が発信している情報などからは以下のような概要がわかります。
項目/学校 | 大学(私立美大) | 大学(国公立芸大) | 専門学校(認可校) |
---|---|---|---|
入試等による選抜 | 実施 | 実施 | 一部で実施 |
修学期間 | 最低4年 | 最低4年 | 2~3年が多い |
卒業までの学費 | 約700万円 | 約300万円 | 約300万円 |
マンガ・アニメの学び | ◎ | △ | ◎ |
学習環境・設備 | ◎ | ◎ | ○ |
教員 | ◎ 一定数の専任教員 | ◎ 一定数の専任教員 | △ 非常勤講師が多い |
教員免許等の資格 | ○ | ○ | × |
学位 | 学士 | 学士 | ― |
称号 | ― | ― | 専門士 |
この一覧は外からもわかる情報です。内側から見たメリット、デメリットはどうでしょうか。
今回はこの学校に入ってみないとわからない内側からのメリットやデメリットについても教員の立場から述べてみようと思います。
ただ、私は国公立芸大には勤めた経験がないので私立の美大や専門学校が中心です。
はじめに
マンガ・アニメ系の大学や専門学校へのお悩みに答える、今回はその2回目です。
マンガやアニメの関連学部を持つ美術系の大学や専門学校への進学について、実際に複数の大学や専門学校にて15年以上の教員歴を持ち、さらにアニメーションの制作現場で約10年にわたって新人の教育にたずさわってきた経験を活かしてアドバイスをしてみます。
ここに書くのはあくまで長年の教員経験を通じて感じた私の個人的な意見です。
最終的にどのような選択をするかは、あなた次第だと知っておいて下さい。
美術系の大学や専門学校への進学について悩んでいる時の参考にしてもらえればと思います。
マンガ・アニメ系美大進学のメリットとデメリット
今回はマンガやアニメの学部や学科を持つ大学や専門学校へ進学するメリットとデメリットについて見てみようと思います。
最初に大学のメリットとデメリットを考えてみましょう。
マンガ・アニメ系美大進学のメリット
まずマンガ・アニメ系の大学に進学するメリットと考えられるものです。
同じ目標を持った仲間と知りあえる
これは正直言ってかなり大きいと思います。
私は一般の大学の出身だったのでアニメの業界に一緒に行く人間などいるはずもなく、大学時代の友人たちには「わけのわからん仕事してないで真っ当に働け」と言われる始末…(笑)。
そういった意味でも「マンガを描く!」「アニメを作る!」といった同じ目標を持った仲間と大学時代に知り合えるのは、目標を達成する上で非常に心強いことだと思います。
卒業後も仕事の悩みを相談したり、色々なアイディアや情報を交換できる仲間がいることは仕事を長く続けていく上でも有利になるでしょう。
漫画・アニメ業界関連の情報を得ることができる
ネットで情報を得られる時代になったとはいっても、美術系の大学にはクリエイティブ系の職種に関する良質な情報がたくさん入って来ます。
教員はマンガやアニメ、イラストの業界で働いた経歴を持つ人が多いでしょうし、同じ学科の友達とも色々な業界関連情報を共有できるでしょう。大学の就職サポートの事務局にも関連の企業から多くの求人情報がやってきます。
常にマンガやアニメの業界に関する新しい情報に触れることができる環境は一般の大学では手に入れることはできないものです。
さらにマンガを描くという面で言えば、在学中に色々な出版社や編集者と知り合える機会を設けている大学や専門学校はたくさんあります。雑誌ベースのデビューを考えている場合は貴重な機会です。
充実した学習環境と設備
私は私立の美術系大学と専門学校の両方で教えてきましたが、
学習環境や設備面については専門学校より大学の方がかなり充実している印象です。
大学は各専門分野で専用の実習室を備えていたり、図書館などにマンガやアニメ関係の資料類のアーカイブも多数そろえています。
自分専用の作業机がもらえ、授業時間外も制作活動に使えるような大学もあります。
こちらはオープンキャンパスなどに参加して確認してみると良いでしょう。
「学士」の学位が取得できる
大学では「学士」の学位が取得できます。
大学はディプロマポリシーという学位授与の方針を定めており、所定の単位を取得して卒業した学生には、この学士の学位が与えられることになります。
これは大学という高等教育機関を卒業した証明で、国際的に認められた学位であり、学士の学位を持っていれば海外の大学院に進学することも可能となります。
教員免許の取得が可能
大学や学部にもよりますが、高校や中学の美術の教員免許の取得が可能です。
これは専門学校に進学した場合には得られないメリットです。
最近はマンガやアニメの制作を美術の授業に取り入れていたり、専門に学ぶためのコースを設置している高校もあります。
マンガやアニメの作成指導が可能なスキルを持つ教員は貴重なので、こういった高校から求人がくることもあります。実際に高校で教職に就いた卒業生も何人かいます。
ただ、教員免許はどの大学でも取れるというわけではないので、教員免許の取得を考えているなら、志望先の大学に教職課程のカリキュラムがあるかどうか確認してみるのがよいでしょう。
その他にも博物館学芸員や図書館司書の資格が取れる大学もあります。
これも興味があるなら大学に確認してみましょう。
マンガ・アニメ系美大進学のデメリット
次にマンガ・アニメ系の大学に進学する時のデメリットです。
専門だけを集中して学ぶことができない
大学は専門の学部やコースで学ぶ専門科目の他に一般教養科目等を開講していて、学生はこれらの科目もふくめて、定められた単位を修得しなければ卒業できないことになっています。
大学では一般教養科目もカリキュラムに取り入れる必要があるため、どうしても専門科目にさける時間は限られてきます。
専門的な知識や技術を習得したいと強く希望する学生の中には一般教養科目の授業をうけることに積極的でない人もいますが、幅広い内容を学ぶことは決してデメリットとは言えません。
一般教養科目を履修することに必要性を感じないというのであれば、専門学校への進学も検討してみると良いでしょう。専門学校では専門分野だけを集中して学ぶことができます。
卒業までに最低4年かかる
大学に進学すると卒業までに最低4年かかります。
貴重な10代後半から20代前半の4年間です。絵を描く力も大きく伸びる時期です。
無意味な4年間にしないように4年間の学習計画はしっかり立てておくとよいでしょう。
私立美大は学費が高い
大学で学ぶ時の一番の問題はやはり学費の問題になってくるでしょう。
学費は私立大学に進学するか、国公立大学に進学するかでかなり変わって来ます。
私立の美術系の大学は特殊な実習用の教室を備えていたり、色々な機材やソフトを使用したりするので講義系の授業が中心の一般の大学にくらべて学費の総額がどうしても高くなってしまいます。
大学によって金額は多少変わりますが、総じて授業料は高額になります。
私立の美術系大学の1年間の授業料は150万円~160万円くらいにもなってしまいます。
これに加えて、入学する時には入学金が別に30万円ほど必要になるので、私立の美術系大学では4年間の学費の総額は650万円~700万円くらいになるでしょう。
私立の美術系大学に進学する場合は、まずこの高額な学費を継続して支払うことが可能かどうかをよく考えましょう。進学したものの学費が払えずに学校を離れることになる人も少なくないです。
とてもこの金額は…という人は国公立の芸術大学を検討してみるとよいでしょう。
国公立の芸術大学であれば、学費は年額50万円~60万円程度とかなり安くなります。
学費の総額でみても国公立なら4年間で250万円~300万円程度で済むでしょう。
ただ、国公立の芸術大学では油画や日本画、彫刻といったファインアート系が主流で、マンガやアニメといった分野が学べる学部や学科が充実しているとは言いがたいところもあります。
学費については高等教育の修学支援新制度が利用できる場合があるので調べてみるとよいでしょう。
マンガ・アニメ系専門学校進学のメリットとデメリット
次に専門学校へ進学するメリットとデメリットを考えてみます。
マンガ・アニメ系専門学校進学のメリット
マンガ・アニメ系の専門学校に進学するメリットのいくつかは大学と似ています。
同じ目標を持った仲間と知りあえる
これは大学に進学するメリットとほぼ同じです。
ただ、専門学校の方が学科の規模や1クラスの人数が大学より少ない場合が多く、さらには毎日同じ人たちと一緒に同じ教室で学ぶことも多いのでより親密になりやすい印象です。
ただ、それだけにクラス内での人間関係の作り方には注意が必要でしょう。
漫画・アニメ業界関連の情報を得ることができる
これも大学と似ていますが、入ってくる情報はより業界に特化したものになるでしょう。
やはり専門学校ですから、マンガならマンガの、アニメならアニメの、そしてイラストならイラストの仕事をするために特化した情報を入手しやすい環境は魅力的です。
私のいた専門学校は就職指導専門の職員をおいて、特に就活のサポートを充実させていました。
専門的な技術を集中して学ぶことができる
専門学校も年間の授業時間数などが決められていますが、基本的には学びたい専門分野の技術や知識を集中して学ぶことができます。
修学期間は学校によって様々ですが、2年制のカリキュラムをとっているところが多いようです。
2~3年で卒業が可能
専門学校は高校卒業後すぐに現場に入るのは不安だが、4年間という大学の修学期間は長いと感じる人には良い選択肢になるでしょう。
卒業までに必要な期間はおおむね2~3年で、20歳になる年には現場に出ることも可能です。
大学に進学した人よりも1年~2年早く現場に入ることができるのは大きなアドバンテージです。
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学費の総額が美大よりは安い
これも専門学校のカリキュラムが2年程度と短いことによるメリットですが、4年制の私立の美術系大学にくらべると卒業までにかかる学費の総額は圧倒的に安くなります。
ただ、年間の学費で見ると私立の美大とくらべても少し安くなる程度です。
学校にもよりますが、おおむね1年間の授業料で120万円~130万円くらいはかかるようです。
2年制のカリキュラムだと、入学金などもふくめた総額は280万円~300万円程度でしょうか。
私立の美大に進学することを考えると学費の支出は半分以下で済むでしょう。
専門学校も高等教育の修学支援新制度の対象校となる場合があります。
マンガ・アニメ系専門学校進学のデメリット
マンガやアニメの専門学校に進むデメリットを考えてみます。
幅広い分野について学べない
専門だけを学べるということは、それ以外のことを学校で学ぶ機会が少ないということでもあります。
好奇心が旺盛で学習意欲が高い人は専門学校のカリキュラムでは満足できないかも知れません。
卒業後の方向転換が難しい
絵を描くための技術や知識にしぼって学習するため、業界から離脱した時の気持ちの切り替えや別の職業に転職することが難しいようです。
専門学校の卒業生の中には業界の仕事とアルバイトの両方をかけもちし、どっちつかずで中途半端な立ち位置になってしまう人もいます。
アニメやマンガの仕事は魅力的なものなので後ろ髪を引かれがちですが、若いうちに切り替えて転職するなら転職すると覚悟を決めて別の仕事に就く必要があるでしょう。
学校によっては卒業後の就職サポートをおこなってくれるところもありますので、積極的に活用しましょう。
専門学校でも年間の学費は高め
大学との比較では総額の学費が安い面はメリットとしましたが、それでも専門学校の年間100万円を超える学費は高額であると言えるでしょう。
費用対効果を最大化するためにも事前の学習計画を作ることは大切でしょう。
専門学校は2年~3年と修学期間が短いので気が付けば卒業、就活の時期を迎えることにます。
特に2年制のカリキュラムの場合、最初の1年間を終えて2年生になったとたんに社会に出る準備をはじめなければならないので、かなり慌ただしい学生生活となる印象です。
認可校と無認可校
アニメやマンガが学べる大学以外の学校は「専門学校」とひとくくりにされがちですが、いわゆる専門学校と呼ばれる学校は都道府県知事等に認可された「認可校」といわれるものです。それ以外に「無認可校」という学校も存在します。
認可校は文部科学省が定めた要件に従って授業がおこなわれ、卒業時には専門士の称号が付与されます。専門士を持っていれば大学への編入も可能です。他にも通学時に通学定期が使える、日本学生支援機構の奨学金が受けられるなどのメリットがあります。
一方の無認可校はそういったメリットがなく、通学も高額な通勤定期を購入する必要があったりとデメリットも多いですが、中学を卒業していれば入学できる、校舎を設置する基準がゆるいので複数の都市でアクセスの良い都心部にキャンパスを展開しているなど認可校にはない特色を出している学校もあります。学校独自の奨学金制度を設けている学校もあります。
なお、これまでに専門学校のメリット、デメリットとしてあげた各項目については認可校でも無認可校でも大きな差はありません。
一概に認可校か無認可校かどちらが良いということは言えませんが、いずれにせよ進学する際には志望先の学校のカリキュラムなどはよく調べて、より自分にあった学校を選択するようにしましょう。
大学・専門学校共通の大きなメリット
最後に大学と専門学校どちらに進学しても共通するメリットを見てみましょう。
他の人に自分の絵を評価してもらえる
他の人に自分の絵を見せる機会は貴重です。
特に普段から絵を描いている教員や同級生など、絵を評価する能力を持った他者からの批評は自分では気が付いていないミスに気づいて修正し、画力を向上させるチャンスです。
他人に自分の絵を見せることを嫌がる人もいますが、美大や専門学校に進学すれば自然と他人の絵を批評しあえる環境に身をおくことになるので抵抗なく絵を見せられるようになるでしょう。
あこがれの職業を疑似体験できる
マンガやアニメを学ぶことができる学校はあこがれの職業に就くために技術や知識を学ぶ場所というだけでなく、実際の仕事を疑似体験できる場でもあると言うことができます。
あなたが本当にこの職業に向いているか、仕事をこなしていけるかということを学校の実習や課題などを通して確認することが大切になってきます。
現実と理想を見つめ直す期間
実は私は大学や専門学校に進学することのメリットは、この理想と現実を一度冷静になって見つめ直す時間が持てるところが一番大きいと思っています。
身も蓋もない言い方になってしまいますが、マンガやアニメ、イラストなどといったクリエイティブ系の仕事に対するあこがれは若い頃に一時的にできる「はれもの」である場合が多いです。
クリエイティブな仕事がしたいという欲求は厄介な病気のようなところがあります。
その欲求が満たされず、自分が納得できてない状態で無理に別の職業に就いたとしても、この欲求は長い人生のどこかで首を持ち上げてくることになるでしょう。
仮に30代半ば頃に定職にも就いてる状態でこの欲求が出て来てしまったらどうでしょうか。
気持ちを抑えて仕事を続けるか、思い切ってクリエイティブ職への転職をこころみるのか…?
どちらにせよ大きな労苦が伴うことは疑いがありません。
そんなことにならないためにも若い頃にこの欲求に決着をつけておく必要があるでしょう。
大学や専門学校への進学は自分の覚悟に向き合い、欲求を消化する有効な手段のひとつです。
学校の授業で色々な疑似体験をすることで「はれもの」が引いていくこともあります。
実習や課題を通して「自分は向いていない」とわかれば切り替えも早くできるでしょう。
クリエイティブな業界で自分を試す機会を一度も持たず、もやもやとした気持ちを抱いたままでは、いつこの欲求があなたの中で暴れだすかわかりません。
別の道に進むにしても「自分はもう十分にやった!」と思えることが大切です。
一度、学校であこがれの仕事に挑戦して欲求のガス抜きをしておけば、その後の人生で遅れてやってきた厄介な欲求に悩まされる可能性も少なくなるでしょう。
要点まとめ
最後にタイプ別のおすすめ進学先をあげておきます。
自分の進学先を考える参考にして下さい。
タイプ別おすすめ進学先
タイプ | おすすめの進学先 |
---|---|
まだ具体的な目標はないが絵を描く仕事には興味がある | 大学 or 専門学校 |
絵の仕事をしてみたいが、将来的な選択肢はなるべく多い方が良い | 大学 |
進学を考えているが、なるべく早めに現場で仕事をしたい | 専門学校 |
専門的な技術や知識を集中的に学びたい | 専門学校 |
今回は大学や専門学校への進学するメリットとデメリットについて見てきました。
大学、専門学校ともに色々なメリットやデメリットがありますが、進学するのであれば志望する学校についてしっかりと調べて、安易に進学先を決めてしまわないことが何よりも大切です。
ということで、次回は進学することを決めた人に対して「失敗しない学校選び」というテーマで、進学先を決めるまでにやっておいた方が良いことについて話をします。
長い記事になりましたが、読んでいただいてありがとうございました。
それでは、また次回。
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