《初心者~中級者向け》
人間を描く時に難しいのが筋肉です。
人の筋肉を絵として描いていく時には「どこにどういう筋肉がついていてどういう形でどのような特徴があるのか?」という知識が大切になってきます。
筋肉に関する知識を学ぶためには、やはり参考書が大切です。
語学や歴史などと同じく参考書を見ながら描き、頭の中に筋肉の情報を増やしていきましょう。
今回は、私が実際に使ってみて参考になった筋肉について学べる参考書を初心者向けから上級者向けまでのレベル別に5冊(+2)紹介します。
以下が今回紹介する参考書です。
参考書の名前をクリックすると各参考書の詳細解説に飛ぶことができます。
【初心者~初級者向け】
人の描き方の参考書としてもおすすめの筋肉の基礎が学べる初心者~初級者向けの2冊です。
【中級者向け】
筋肉の動きも含めたより深い内容が学べる参考書です。
【上級者向け】
絵を描くための参考書ではなく、医学関係の書籍です。
筋肉についてとても詳しく学べますが、値段はとても高額です。
普通に絵を描くだけなら必要ないですが、内容はとても興味深く絵を描く時の参考としても有用です。
初心者~初級者向け2冊
初心者~初級者向けとして紹介するのは筋肉の基本的な構造が学べる本です。
①『人体デッサン』 視覚デザイン研究所 視覚デザイン研究所編
人体の描き方の参考書の記事でも紹介した視覚デザイン研究所の『人体デッサン』です。
人体全体の描き方についての本なので筋肉についての解説もたくさん入っています。
『人体デッサン』 視覚デザイン研究所 1985年 p.28、p.29 より引用 この1冊で筋肉の基本的な知識については十分に学べる
筋肉だけでなく人体についても詳しく解説されていて網羅的に学ぶことができるので初心者におすすめの一冊です。
筋肉についても人体を描く際に必要となるものにしぼられているので、まずどんな筋肉を知っておけばよいのかという点もわかりやすいです。
『人体デッサン』 視覚デザイン研究所 1985年 p.115 より引用 ポイントをしぼって詳しい解説も入る
この本では人体と筋肉についての基礎を総合的に学ぶことができます。
2025年2月現在の『人体デッサン』(新品)の価格は2000円+税となっています。
古本であれば数百円程度で手に入るようです。
②『やさしい美術解剖図』 マール社 J・シェパード著
この『やさしい美術解剖図』 も人体の描き方の参考書についての記事で紹介したものです。
いわゆる美術解剖図と言われるもので、人の骨や筋肉などの構造を「絵を描く」という目的に合わせて解説してくれます。
『やさしい美術解剖図』 J・シェパード著 マール社 1980年 p.115(左図)、p.33(右図) より引用 解剖図は人体作画に関する参考書と一緒に使うことでより効率的に学ぶことができる
『やさしい美術解剖図』はわかりやすく使い勝手の良い美術解剖図ですが、この1冊だけではどこから筋肉の勉強を進めたらよいかよくわからないでしょう。
筋肉を学ぶ時にこういった美術解剖図は、先に紹介した『人体デッサン』などの人の描き方を解説した参考書と一緒に使うと良いでしょう。
人の描き方の解説書だけだと「ここの筋肉はどうなってるの?」という疑問がどうしても出てきます。
美術解剖図はそういった疑問を解決してくれる手段のひとつです。
筋肉や骨などで不明点が出た時は、美術解剖図を開きましょう。
人の描き方のテキストは、この美術解剖図と合わせて使うことで学習効果の効率化が期待できます。
『やさしい美術解剖図』の新品価格は1450円+税(2025年2月現在)で、古本なら200~300円くらいで手に入ります。
中級者向け2冊+1
中級者向けとして筋肉の動きを含めたより実践的な内容を学べる参考書を紹介します。
③『モルフォ人体デッサン』 ミシェル・ローリセラ著 グラフィック社刊
初心者~初級者向けの参考書から少しレベルを上げて学びたい時におすすめなのが、『モルフォ人体デッサン』です。
模写におすすめのテキストとしても紹介していますが、筋肉を学ぶ本としてもとても有用です。
『モルフォ人体デッサン』は、特に動いた状態の筋肉を学ぶのに適しています。
『モルフォ人体デッサン』 ミシェル・ローリセラ著 グラフィック社 2016年 p.48、49(上図)、p.82、83(下図) より引用 動いた状態での筋肉を描く練習に適した1冊
普段の生活の中でもよくあるポーズから筋肉の状態を理解することができます。
この本を効果的に使おうと思うのであれば、筋肉の基礎的な知識はあった方がよいでしょう。
『モルフォ人体デッサン』 ミシェル・ローリセラ著 グラフィック社 2016年 p.301(左図)、裏表紙折り返し(右図) より引用 筋肉の基礎知識がないと都度表紙折り返しの対応表を見て確認する必要があるので中級者向け
模写をしながら、自分が描いている筋肉が何なのかを考えながら描いて理解を深めていきましょう。
『モルフォ人体デッサン』の新品は税込2200円、古本は3000円くらいの値段になっているものもあるので購入時には注意が必要でしょう。(2025年2月現在)
④『新編 美術解剖図譜』 東京芸術大学美術解剖学教室編 日本出版サービス刊
『新編 美術解剖図譜』はタイトルの通り、美術解剖図です。
美術系の東大と言われる東京芸術大学の「美術解剖学教室編」となっているだけあって、とても詳細に人体の構造について解説されてる1冊です。
一部カラー印刷で筋肉の様子がわかりやすく、また骨だけの状態と、筋肉がついた状態の図をならべて解説してくれるので人体の構造も理解しやすいです。
『新編 美術解剖図譜』 東京芸術大学美術解剖学教室編 日本出版サービス 1975年 p.70、71より引用 同じポーズの骨格と筋肉の比較図があり、カラーで見やすい。
『新編 美術解剖図譜』は美術関連の解剖図としてはかなり詳細まで解説されています。
先に紹介した『やさしい美術解剖図』等と合わせて使うと多角的に筋肉について学べるでしょう。
『新編 美術解剖図譜』 東京芸術大学美術解剖学教室編 日本出版サービス 1975年 p.73、75より引用 視点を変えた同じポーズの筋肉の様子も確認することができる
ただ残念なのは、ここ10年ほどは新たに重版がかかっていないようで新品を手に入れるのは難しくなっています。
古本はオンラインなどで購入できますが、高額での出品もあるので、元々の価格である2000円+税をひとつの基準として購入を検討してみてもよいでしょう。
中古で3000円を超えるような値段のものは、ちょっと高すぎます。
+1『人物画の基礎技法』 J・レインズ著 エルテ出版刊
『人物画の基礎技法』も筋肉を学ぶための良書です。
内容は初級者~中級者向けという感じですが、+1としているのは『人物画の基礎技法』の日本語訳版を出していた出版社が倒産し、新刊としては手に入れることができないためです。
人物の描き方全般の解説書ですが、全体の3分の1ほどが筋肉の解説になっています。
『人物画の基礎技法』 J・レインズ著 エルテ出版 1987年 p.62(左)、64(中央)、66(右)より引用 人の胴体部の深層(左図)、中層(中央)、浅層(右図)の筋肉の様子を解説する3つの図解
実際に人間が動いた状態の筋肉の様子や、骨に直接付く深層の筋肉から皮膚の直下にある浅層の筋肉までを段階的に描いた解説図があるなどわかりやすい内容になっています。
古本は2025年現在でも手に入れることができ、本の状態にもよりますが500円~1000円程度で購入することが可能なようです。
上級者向け1冊+1
上級者向けとして紹介するのはかなり特殊な2冊です。
どちらも医学関連の書籍で、筋肉の構造や役割、人の動きをより深く学びたいという人向けの本です。
⑤『身体運動の機能解剖』 トンプソン・フロイド著 医道の日本社刊
『身体運動の機能解剖』は、ケガからの回復を目的としたリハビリなどを指導する理学療法士やジムのトレーナーなどを対象とした書籍です。
これまでに紹介した美術参考書とは目的が異なりますが、筋肉の機能と役割、実際の動きを豊富な写真や解説図を使って説明してくれるので、絵を描く際の参考書としてもとても有用です。
私は主に肩回りの構造と筋肉の動きを学ぶために購入したのですが、定価4,730円(税込)とかなり高価な本なので、絵を描く参考書として買うには少し覚悟がいる値段です。
ただ高価な分、美術関連参考書ではほとんど説明されることのない筋肉とその動きについて非常に深く学ぶことができます。
『身体運動の機能解剖』は医学関係書と美術参考書のちょうど真ん中くらいにあるバランスのとれた人体機能解説書で、絵を描くために筋肉についてより深く学びたい人におすすめです。
下記に引用したのは肩回りの構造や動きについて解説したページの一部ですが、人間の肩関節の構造や動きが非常によくわかります。
筋肉の解説だけでなく動きについての詳細解説もあってわかりやすい 『身体運動の機能解剖』 トンプソン・フロイド著 医道の日本社 1997年 p.46(上図左)、60(上図右)、66(下図左)、51(下図左)より引用 適切な図で説明されるので各筋肉の骨への付き方や機能についてしっかりと理解できる
肩回りの構造や筋肉、その動きだけでも実に30ページ以上にわたって解説してくれます。
美術参考書では肩まわりだけでここまでの分量をさいている書籍はほとんどありません。
筋肉の機能や役割について理解した上で人の体を描きたいというこだわりの強い中級~上級者の人にとって『身体運動の機能解剖』はとても使いやすい参考書となるでしょう。
美術参考書として考えた場合には高額な書籍ではありますが、素人でも比較的読みやすく内容はかなり充実しているのでコスパはかなり良い1冊だと思います。
+2『基礎運動学』 中村隆一 他著 医歯薬出版株式会社刊
この『基礎運動学』も上記の『身体運動の機能解剖』と同じく理学療法士や作業療法士など医療専門職の方を対象とした書籍です。
あまりに特殊な内容なので+1として紹介します。
値段も7000円以上ととても高価な本で内容も高度なので、普通に絵を描くことだけを目的としている人にはおすすめしません。
内容は上で紹介した『身体運動の機能解剖』よりも、より専門特化したもので8割くらいは何が書いてあるのかよくわかりません(笑)。
『基礎運動学』第6版補訂 中村隆一 他著 医歯薬出版株式会社 2020年 p.217より引用 筋肉についての解説もあるが、筋肉を描くための美術参考書として使うには物足りず内容も難しい
しかし、残りの2割程度は絵を描く時、特にアニメーションの作画や表現をおこなう時に有用な内容が掲載されています。
『基礎運動学』第6版補訂 中村隆一 他著 医歯薬出版株式会社 2020年 p.387(左図)、424(右図)より引用 人の歩行や階段を下りる運動について解説しているページの引用、面白いが難しい
筋肉と合わせて、人の歩行や走行、階段の上り下りなど「人間の運動」に興味がある人には活用できる部分のある1冊だと思います。
私が持っているものは第6版ですが、2024年の12月に第7版が発行されていて、2025年時点ではこれが最新のバージョンとなっています。
要点まとめ
筋肉を描くのは難しいことですが、知識をつけた上で練習を重ねれば描けるようになります。
なんとなく描くのではなく、自分がどの筋肉を描いているのかをしっかり意識して描くことによって効果は何倍にもなるでしょう。
参考書をいくつか用意して、お手本を見ながら筋肉を知って描いていってみましょう。
次回は絵を描く時に優先しておぼえておくとよい筋肉と、筋肉を描く練習方法について解説します。
それでは、また次回。
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