《初心者~中級者向け》
今回は2点透視図法で箱を描く方法について説明します。
2点透視は消失点を2つ使ってカメラに対して角度がついた対象を描く透視図法となります。
▼前回の2点透視の基礎知識についての記事はこちらから▼
当然、箱を描く時もカメラに対して角度がついた箱を描くことになります。
大学の授業などでもそうですが、1点透視の箱は描けるのに2点透視の箱になるとどう描いてよいかわからない、描けないという人が一定数います。
しかし、それは描く力がないわけではなく、描き方を知らないだけということが多いです。
そのため、描き方を知った途端に描けるようになります。
透視図法では1点でも2点でも何でもそうなのですが、箱が描けることが基本となります。
箱を描くことを通して、1点透視や2点透視についての理解も深まっていきます。
今回は2点透視では箱をどのようにとらえて描いているのかという、考え方の部分からわかりやすく解説していきます。
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今回の授業内容と難易度
では、今回の内容です。
2点透視での箱の描き方を解説します。
箱が描けるようになれば、2点透視で色々なものを描いていく基礎ができあがります。
- 難易度 2:★★☆☆☆
- 重要度 5:★★★★★
- 画力向上度 4:★★★★☆
2点透視の箱も描く手順さえ知ってしまえば、簡単に描くことができます。
描き方自体の難易度はかなり低めです。
描けないのは、2点透視がどういうものかということと描く手順を知らないだけです。
難易度に対して重要度と画力向上度はかなり高めなお得な知識です。
2点透視で絵を描く機会は多いので、ぜひここで箱の描き方を身につけておきましょう。
「2点透視図法」のおさらい
まず、箱を描く事前の準備として2点透視の基礎をおさらいしておきます。
必要ない場合は「箱を描く手順」まで飛ばして下さい。
2点透視の消失点は2つ
「2点透視」は2つの消失点を設定して描く透視図法です。
一般的に「2点透視」という場合、2つの消失点はアイレベル上に設定します。
2つの消失点は1つだけ画面外にある場合、2つとも画面外に存在する場合などがあります。
2つとも画面内に存在することもありますが、その場合は少し注意が必要です。
カメラにとらえる対象には角度がつく
さらに2点透視で描く対象はカメラ(観察者)に対して角度がつきます。
これを箱で説明すると下記のような状態です。
カメラに対して箱は角度がついた状態で見えています。
ちなみに1点透視の場合、カメラと箱は正対することになります。
箱には角度がつかず、箱のいずれかの面がカメラの方を向いています。
2点透視では「消失点は2つ」「描く対象には角度がつく」という点をおぼえておいて下さい。
2点透視で箱を描く手順
それでは、2点透視で箱を描いてゆきます。
1点透視との一番大きな違いはカメラの方を向いている箱の面がないという点です。
1点透視の時はカメラと箱が正対しているので、箱のこちらを向いている四角形から描けばOKでした。
では、2点透視では箱のどこから描けば良いのでしょうか?
以下、順に2点透視での箱の描き方をくわしく見ていきましょう。
①アイレベルと消失点を定める
最初に画面の中央付近にアイレベルを定めます。
アイレベルが描けたら、画面の両端にそれぞれ消失点を設定します。
今回は左端の消失点を「VP1」、右端の消失点を「VP2」としておきます。
アイレベルと消失点の設定が終わったら、箱を描く準備は完了です。
② 棒を1本立てる(カメラに一番近い箱の角)
まず、箱を描こうと思うところに球であたりを描いてみましょう。
あまり大きな球にならないように、ほどほどに。
あたりが描けたら、あたりの球の前に棒を立てましょう。
この棒はカメラに対して斜めに置かれた箱の辺のひとつで、カメラに一番近い箱の角になります。
ここでカメラと箱の関係を整理しておきましょう。
箱はカメラに対して斜めに置かれているので、箱がどのような角度で置かれても箱の4つの角のいずれかひとつがカメラに一番近い状態となります。
1点透視ではカメラに一番近い箱の面から描いていきましたが、2点透視ではこのカメラに一番近い角(辺)から定めて描いてゆくのが、わかりやすく簡単です。
2点透視ではこの「箱の一番近い角となる棒」がパースで箱の形状を作る基準となります。
この棒は、あたりで描いた球を箱に収めるイメージで描くと良いでしょう。
③ 棒から2つの消失点に向けてパース線を引く
角となる棒が描けたら、棒の上下の端から左右の2つの消失点に向けてパース線を引きます。
このような感じです。
このパース線は、カメラ側を向いている箱の2つの面が収束していく方向を示します。
④ 箱の奥行きを決める
パース線が引けたら箱の奥行きを決めます。
2つの消失点から引いたパース線は箱の手前側に来る面を作り出します。
今回は好きなところで良いので、箱が立方体に見えるくらいのところで奥行きを決めましょう。
左右それぞれのパース線の上下をつなげるように垂直線を引きます。
この2本の垂直線が箱の2面の奥側の辺、つまり箱の奥行きとなります。
奥の辺が決まったら、最初に描いた棒の上端と下端とそれぞれつなげておきます。
ページを開いた本のような形ができあがりました。
これがカメラ側を向いている箱の2面となります。
⑤ 奥行きの各角から消失点にパース線を引く
箱の奥行きが決まったら、奥行きとなる2つの辺の上下からもパース線を引きます。
箱の右側の辺からはVP1に向けて、左からはVP2に向けて4本のパース線を引きましょう。
VP1に向かったパース線は箱の裏側の右の面を、VP2に向かったパース線は左の面を作ります。
この面は箱の裏側になるので、普通の箱であれば見えない面となります。
⑥ 箱の一番奥の辺を決める
箱の裏面のパース線が引けたら、このパース線が交差するところが箱の一番奥の辺となります。
これも垂直線で上下のパース線をつなげておきます。
今回の箱は透明な面で構成された箱という想定です。
なお、最初に描いたカメラに一番近い辺と重なる場合、透明な箱でも奥の辺は一部分しか見えません。
左右の面が画面に対して90度ずつの角度をつけて置かれている場合、手前の辺と奥の辺は重なって見えます。
手前の辺と奥の辺がずれていれば、このような感じになります。
これで最後の4つ目の一番奥の辺も確定しました。
⑦ 箱の形を作って完成
一番奥の辺が決まったら、④で描いた左右の奥行きの辺とつなげておきます。
このような感じで箱の奥側の2面もできました。
以上で2点透視を使って描く箱の完成です。
2点透視で絵を描く場合はこの箱を描くことがすべての基礎となります。
この箱をベースに色々なものを形作っていくことになります。
2点透視での箱の描き方の動画解説はこちらから▼
▼パースの学習におすすめの参考書はこちらから▼
2点透視で絵を描く時の注意点
以上、2点透視を使った簡単な箱の描き方を解説しました。
ただ、2点透視で絵を描く時にはひとつ重要な注意点があります。
それは「2つの消失点を近づけすぎない」ということです。
もう少し具体的に説明すると「描く対象の大きさや位置によって2つの消失点が相対的に接近する場合、その2つの消失点が作り出す空間に歪みが生じる」と言うべきでしょうか。
どういうことか説明していきます。
ここでは、わかりやすいように少し極端な例を描いてみます。
先ほどの箱の描き方の説明の時と同じようにアイレベル上に2つの消失点を定めます。
違いは2つの消失点の距離がかなり近くなっているというところです。
この2つの消失点を使って同じように箱を描いてみます。
すると、このような箱ができあがりました。
箱であることはわかりますが、何やら下に伸びたような変な形になっています。
いったい何がおかしく見える原因でしょうか?
ここで正しい箱(立方体or直方体)の形を思い出してみましょう。
箱は6つの四角形(正方形あるいは長方形)で作られています。
そして、四角形の4つの角の角度はそれぞれ90度となります。
箱はこの90度の角度を持つ四角形が6枚組み合わさって作られる立体です。
なので、箱の各角の最小の角度の見た目はどの方向から見ても90度以上となるのです。
改めておかしな箱を見てみましょう。
箱をよく見てみると箱の下部の角の角度がきつすぎる感じになっています。
ここの角度を分度器をあてて見てみると約55度となっていて、90度を大きく下回っています。
これでは箱の形状としてはおかしいということになってしまいます。
2点透視で2つの消失点を近づけ過ぎてしまうとVP1とVP2から伸びるパース線の交差する角度が、特に箱の下側のところで急になり過ぎて、このような形の歪みが発生します。
特殊なレンズを使えば、今回の変形した箱のような感じに見えることもあるのですが、人の目で見たような絵を描く場合であれば、特殊な例は意識する必要はありません。
人間の視点で紙やキャンバスに2点透視で絵を描く場合は、2つの消失点のどちらか、あるいは両方を画面の外に設定するようにすると良いでしょう。
どれくらいの大きさのものをどこに描くのかによって2点の距離を適切に設定しましょう。
何かを2点透視で描いていて「絵が歪むな…」という場合、描いている対象に対して2点が近すぎることが原因である場合が多いです。
私もこれを知らない頃は、多くの歪んだ絵を描いていました…。
要点まとめ
では、今回の要点をまとめておきます。
2点透視で箱が描けると描けるものが大幅に増えます。
正しい2点透視での箱の描き方を知って、色々なものを箱でとらえて描いてみましょう。
そして、わからないところは参考書などで確認しながら描くとよいでしょう。
箱は透視図法での作画の基礎となるものです。
各透視図法での箱の描き方をしっかりと身につけておきましょう。
次回はパースを使った実用的な知識として「分割」について解説します。
パース上でユニット分割をする方法を知るとパースのついた壁に窓を描いたり、ブロック塀を描いたりすることができるようになります。
絵を描く上で「分割」は、とても使える知識です。
ぜひ知って使えるようになってみて下さい。
それでは、また次回。
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