《レベル:初級者向け》
今回は横から見た人体の簡単な描き方とポイントについてです。
▼横顔の描き方についてはこちらから▼
前回記事で使った8頭身の人体モデルをもとに同じ比率で横から見た人体を描いて説明します。
横から見た人体の描き方に悩んでいる人に向けて、とりあえずポイントを3つにしぼって側面人体の描き方を説明をしていきます。
基本となる7つの重要な人体のバランスや比率について詳しく知りたいという人は前回の記事を読んでみてください。
前回の人体正面の描き方についての記事はこちらから▼
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今回の授業内容と難易度
では、今回の内容です。
- 横から見た人体(側面図)を描く時におさえるべき3つのポイント
- 側面人体のシルエットの確認の仕方
初級者向けにしていますが、これだけで側面人体を描く時の大切なポイントはおさえられる内容になっています。
- 難易度 2:★★☆☆☆
- 重要度 4:★★★★☆
- 画力向上度 4:★★★★☆
今回も基礎的な内容です。難易度はそれほど高くありません。人体の側面図を描く上で重要なポイントについて話しますので重要度、画力向上度は高めになっています。
「横から見た人間を描いたけれど、どうもいい感じにならないな…」と悩んでいる人はぜひ読んでみてください。
人を描くためのおすすめ参考書についての記事はこちらから▼
人体側面図を描く(失敗例)
まず横から見た人体を描いてみます。
正面図の説明で描いた8頭身人体にあわせて描きます。つまり比率やバランスは同じです。
こんな感じで描いてみました。
…しかし、ここで描いたのは実は色々と失敗した人体側面図です。
この側面図は横から見た人体を描く時に注意すべきポイントをすべて外して描いています。
次の項からこの失敗例を人体側面のポイントを説明しながら修正していきます。
側面人体を描く時におさえておくべきポイント3つ
では、この失敗した人体側面図をポイントをおさえながら順番に直していきます。
今回、修正するポイントは主に3つです。
まず下半身から見ていきましょう。
1.下腿部分は弓なり
この図の下半身部分で一番おかしなところは下腿(ひざから下)です。
腰からふともも、ひざ、そして下腿とまっすぐに描かれています。
ここをまっすぐ描いてしまっているのが失敗している原因です。
では、どう直せばよいでしょうか?
まず、最初に脚の骨を確認してみましょう。
ふともも(大腿)の部分には、大腿骨という非常に大きく太い骨があります。
下腿部分の骨は2本です。脛骨という太い骨と脛骨にそうようについている腓骨という細い骨です。
大腿と下腿の間にはひざの関節があり、ここには膝蓋骨という骨があります。いわゆる「ひざの皿」です。スポーツをしている人なんかがよく割ってしまうアレです。
こちらの図はかなりデフォルメして描いていますが、腰から大腿、そして下腿までの骨は意外とまっすぐにならんでいるようです。
私の略図だけだと説得力がないと思うので権威ある美術参考書の骨格図も引用しておきましょう。
『新編 美術解剖図譜』 東京芸術大学美術解剖教室 編 1975年 p.43 より引用
こちらの骨格図を見ても骨自体の湾曲などはありますが、大腿から下腿の骨は比較的真っすぐならんでいるのがわかります。
この骨の構造に合わせるなら下腿部分は失敗例のようにまっすぐに描いてもよさそうです。
しかし、上で引用した骨格図に描かれている人体のシルエットの方をよく見ると大腿からひざ、下腿へと下がっていくにしたがって、後ろに反るような感じになっているのがわかるかと思います。
実はこの下腿の反りが側面人体の下半身を描く時に大切なポイントのひとつです。
しかし、骨はまっすぐにならんでいるのに、なぜシルエットは下腿のあたりで後ろに反ったように見えるのでしょうか?
その答えはこの部分の「筋肉のつき方」にあります。
脚の大腿から下腿にかけての筋肉のつき方を確認してみましょう。
まずふともも(大腿)の部分を見てみます。
大腿骨のまわりの筋肉は図のように骨をとりまくようについています。自分のふとももをさわってみてください。ぐるっと筋肉がとりまいていて大腿骨に直接さわることが難しいと思います。
次にひざから下の下腿を確認してみましょう。
下腿の筋肉は図のように側面と後ろ側にかたまってついていて、脛骨の前側には筋肉はほとんどついていないのです。
ふとももの時とおなじく実際に手でさわってみるとよくわかると思います。
下腿の後ろ側には大きな筋肉(腓腹筋)がついていますが、前側には筋肉はほどんどなく皮膚を通して脛骨を直接さわることができるかと思います。ここがいわゆる脛の部分です。
歩いていて、この脛を何かにぶつけた経験があるという人も多いと思いますが、ここをぶつけた時は特に痛みを強く感じると思います。
なぜ脛をぶつけるとすごく痛いのかというと筋肉によるクッションがなく、直接骨にダメージがくるからです。筋肉は骨を守る役割もはたしてくれているのです。
このように下腿部分の筋肉がかたよってついているので、ふともも部分にくらべて下腿は弓のように後ろに反って見えるのです。
このことを考えて、先ほどの失敗例を修正してみましょう。
ひざから下を弓状に後ろに反らせて湾曲させます。
下腿部分を修正しました。
この下腿の反りは側面の脚のシルエットを安定させる上で特に重要です。
2.でっぱっている所とへっこんでいる所
続いて側面図全体を見てみましょう。
上半身の胸から腹、腰にかけてのラインがまっすぐすぎて、なんだか窮屈な印象です。
では、この部分の骨を確認してみましょう。
ここには背骨(脊椎)がありますが、横から見るとまっすぐではなく湾曲(曲がっていること)しているのがわかると思います。
このように背骨は曲がっていて、その曲がりが人間の背中側の美しいシルエットを作っています。
側面の人間を描くにはこの背骨の湾曲も頭に入れておいて、体のどこがでっぱっていて、どこがひっこんでいるのかをしっかりと意識して描いていくことが大切です。
このように人体を側面から見た場合、肩のあたりででっぱり、腰に向けて徐々にひっこんでいきます。そしてまたお尻にむけてでっぱっていくのです。この凹凸により生み出される背中の曲線が人体側面上半身の美しいシルエットを作り出すのです。
ではこちらも失敗例を修正しておきましょう。
人間の体のでっぱっている所とひっこんでいる所を意識して直していきます。
こんな感じでしょうか。背中に曲線が出てきました。
3.胴体から頭部の美しさを出す首の前傾(ぜんけい)
下腿の反りを描き、背中に湾曲もつけました。これでシルエットは、かなり直って来ましたが、さらに上半身で気をつけなければならない大切なポイントがあります。
それは首の前傾(前にかたむいていること)です。
首のつき方について確認してみましょう。失敗例の図では胴体から首、頭部へのつながりはこんな感じになっています。
まるで筒の上にボールをのせたような感じです。この首では、まるでけがをしてコルセットをつけているような窮屈な感じになってしまっています。
首は前の項でも確認した背骨の曲線の一部になるのですが、首のあたりの背骨を特に頸椎と呼びます。
この頸椎は頭蓋骨につながっている7つの骨の集合体ですが、この頸椎は前に少し傾いています。
この頸椎の傾きが首の前傾を生み出します。
首を描く時は胴体からまっすぐ首、頭と描いていくのではなく、この首の前傾を考えて、胴体から少し前に傾けて首を描くようにしましょう。
失敗例の絵も修正しておきます。
このような感じで首の前傾を描いておきましょう。
美しい側面人体はシルエットで決まる
今回は3つのポイントにしぼって人体側面図を修正してみました。
確認のため最初に描いた失敗例と修正後の側面図をシルエットにして見てみましょう。
シルエットで見ると最初に失敗例として描いたものに比べて、修正後のものはメリハリが出てかなり安定した側面人体図になったのがわかるかと思います。
横から見た人間を描く時は、このようにシルエットのポイントを知って描くことが大切です。
特に難しいことはありません。デッサン的なうまい下手はあると思いますが、側面人体のシルエットのポイントさえ知っておけば同じような人体を描くことは誰でもすぐにできます。
これらのポイントを知っているということは、何も知らない人よりも優れた絵を描く力を身につけていると言えるでしょう。
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《おすすめ参考書》
『人体デッサン』 視覚デザイン研究所
色々な人体の描き方について詳しく勉強できる初心者にもおすすめの一冊です。
要点まとめ
それでは、今回の要点をまとめます。
- 横から見た人体を描くにはシルエットの特徴を知ることが大切
- 側面から見た脚を描く時は下腿部分の弓状の湾曲がポイント
- 背骨は湾曲しているので、でっぱる所とひっこむ所を把握しておく
- 首は胴体に対して少し前に傾いて(前傾)ついている
今回の側面人体のシルエットのポイントも知らないと描けないが、知っていると描けるという絵に関する知識のひとつです。
こういったものは自分の頭の中の知識だけで闇雲に描いていても描けるようになるものではありません。
自分で気付いて描けるようになったとしても無駄な時間がかかってしまいます。
絵を描く力を効率的にあげるためには参考書や絵を描く解説をしているサイトなどで、まずは描く対象についての知識を増やしてゆきましょう。
その上でお手本を見て何度も描いてみることが大切です。
それでは、今回は以上です。
次回は簡単な人体の描き方の3回目。
背面(うしろから見た)人体の描き方について説明します。
それでは、また次回。
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