《初級者~中級者向け》
絵を描く時にラフ(下描き)を描いているでしょうか?
立体的で動きのある人間を描く時などは、ラフの描き方がとても大切です。
できあがった絵が、なんだかペッタンコで立体的に見えないのよねぇ…
このような問題の解決には立体的なラフの描き方を知る必要があります。
キャラクターやモチーフの「線」だけを見ているうちはものを立体的に描くことは難しいのですが、立体を意識したラフを描くだけで大きく改善することができるでしょう。
今回は立体的なラフを描くための考え方とコツについて説明します。
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今回の授業内容と難易度
第18回目の内容です。
今回はラフから絵を描く方法についてです。
球と円柱から人間を描く方法についてはすでに説明していますが、今回はその応用です。
最終的には動きのある人体をラフから描いてみます。
- 難易度 3:★★★☆☆
- 重要度 5:★★★★★
- 画力向上度 5:★★★★★
ラフから描く方法を身につけると、絵を描く力が飛躍的に向上するでしょう。
円柱や球(塊)を描くことができれば、とりあえずラフを描くことができるようになります。
立体的な絵を描くためのラフのとり方について知っておきましょう。
輪郭線(りんかくせん)とは何か?
みなさんが何かの絵を描く時に線を引いて、その物体と空間の境目を描くと思います。
この線が「輪郭線」と呼ばれるものです。
輪郭線は必要か?
「輪郭線」は2次元的に絵を描いて表現する時に必要となってきます。
キャラクターも車もビルもコップも机も…すべて「輪郭線」を使って描きます。
小さな子供や絵を描いた経験がほとんどないような大人でも、絵を描くとなった場合には、まずはその対象を表現するために「輪郭線」から描いていくのが普通です。
では、「輪郭線」とは何でしょうか?
物体を直接観察してみると「輪郭線」など存在しないことがわかると思います。
あるのはその物体そのもので、その物体と周囲の空間を区切る線など存在しません。
「輪郭線」は世の中にある3次元的な色々な物体を2次元の平面的なキャンバスの上に再構成するために用いる表現のための手段に過ぎません。
こちらの写真を見て下さい。
同じカップを色々な角度から撮影したものですが、写真ではどれも立体的に見えます。
では、このカップと空間を分ける輪郭線を描き出してみましょう。
どうでしょうか?
持ち手の部分を省略して、カップの輪郭を線でなぞったものですが、写真と違って輪郭線だけでは2次元的でとてもぺったんこな印象です。カップの立体的な表現が十分にできていません。
線はそもそも2次元的で、それだけでは3次元的な表現は難しいものです。
しかし、平面に絵を描くためには輪郭線は必要です。
絵は線を使って描くことになるのですが、できあがった絵がぺったんこにならないためには頭の中で描く対象をどのように解釈するかがとても大切なのです。
つまり対象を如何に立体的にとらえるかということが重要になるのです。
輪郭線にこだわりすぎない
私が教えていた学生にも輪郭線だけを追って絵を描く学生が何人もいました。
絵を描きはじめたばかりで経験が少ない人ほど線だけを見てしまいがちなようです。
しかし、前の項で述べたように描く対象である人や物には本来、輪郭線はありません。
大切なのは物体そのものが持っている形をどのようにとらえて描くのかということです。
輪郭線はその形をとらえた結果を絵として表現するために出て来るものに過ぎません。
まずは描く対象の立体感を頭の中でしっかりととらえることが重要です。
描く対象が目の前にあるなら、実際にさわってみたり、角度を変えて観察してみるのが良いでしょう。その対象の立体感をより正確にとらえることができるはずです。
絵を描く時は線よりも形をとらえることに意識を向けるべきでしょう。
先ほどのカップを輪郭線でなく形を意識してとらえてみると、このような感じでしょうか。
輪郭線は使っていますが、それは円筒状のカップを2次元的なキャンバスの上に表現するための手段に過ぎません。
線でなく形を意識することが絵を描く力をのばすためにはとても大切なポイントです。
「ラフ」で形をとらえる
絵を描く時はまず「ラフ」から
絵を描く時に重要なのは輪郭線でなく物体そのものの形だと理解できたとして、ではどのように絵を描いていったら良いのでしょうか?
これは今回のテーマでもありますが…
絵は、まずラフ(下描き)から描いていきましょう。
目と脳でとらえたものの立体感をラフを使って形を描いていくのです。
描く対象がいくつかのブロックに分かれているようなものなら、それぞれのブロックごとに立体を描いていくのも良いやり方です。
人や物を描く時のラフのとり方は色々ありますが、結果として描いたものが立体かどうかを左右するのは「どのようにラフをとったか」ということです。
ラフを描いても、そのラフ自体が立体的でなければ、出来上がってくる完成した絵も立体的にはならないでしょう。
人間を描く時のラフのとり方を例に考えてみましょう。
「棒人間」でラフを描くことについて
人間のラフのとり方として、こういった棒人間を使うことを勧められることがあるかと思います。
しかし、立体的な人間を描きたいのであれば、私は棒人間でラフをとることをお勧めしません。
なぜなら人間の腕や脚や関節といった各パーツは棒や線や丸ではないからです。
実際にいくつか棒人間でラフを描いてみましょう。
使えそうなラフも描けますが、やはり体の厚みのある部分がとらえきれていません。
特に腕を組んだり、脚を組んだ時に形があいまいになってしまっているようです。
自分の体をさわってみましょう。
一番細くてちいさい小指だってちゃんとした立体を持っているのがわかると思います。
つまり、棒人間では立体的な人間のラフをとることはできないのです。
「厚み」を持った立体的なラフを描こう
人間の体には「厚み」があります。
棒や線で表現できる部分など、ただの一ヶ所もありません。
この人間の持つ「厚み」を常に意識してラフを描くことが何より大切です。
では、どのようにラフをとれば良いのでしょうか?
答えは簡単です。
棒や線でなく、厚みのある「円柱」や「球体(塊)」を使ってラフを描けば良いのです。
「円柱」や「球体(塊)」はそれ自体が立体的なものなので、それらを使って描いたラフも当然のことながら立体的になるのです。
▼円柱や球の描き方や人間の描き方についてはこちらの記事で解説しています▼。
◆ 円柱と球の描き方
◆ 円柱と球を使った人間の描き方
ラフを描く時には「円柱」や「球体(塊)」を使って描く癖をつけておくと良いでしょう。
先ほどの棒人間ラフを「円柱」や「球体(塊)」で描きなおすとこんな感じです。
棒人間よりも立体感が増したのがわかるかと思います。
ポーズのあるキャラクターの描き方
では、実際に「円柱」や「球体(塊)」を使ってラフを描いてみましょう。
少し難しいかもしれませんが、今回は少し動きのある人間のラフを描いてみます。
走っている人間のラフを描いてみよう
突然ですが、課題です。
絵を描いたことがほとんどない人には、ちょっと難しいかも知れません。
【課題】正面から見た走っている人間のラフを描いてみよう。
《条件》
・ランニングくらいの軽い走り方、男女どちらでもOK
・服を着せる場合は体のラインがわかるくらいのもので。
・清書はせずにラフの状態でもOK。
《時間》5~10分
服のしわなど細かいところまで描く必要はありません。顔も省略してOKです。
この課題で重要なのは体の立体感を意識してラフを描くことです。
人の体が持つ立体をよく考え、円柱や球を組み合わせてラフを描いてみて下さい。
ラフの描き方がわからない場合は、先に解説を見てから描いても良いです。
さらに絵を描く時には何を見て描いてもOKです。
実物が見られるならそれが一番良いお手本ですが、写真や参考書、WEBサイトなど、色々な物を見たり、調べたりして描くことがとても大切です。
色々なものを観察して知ることで絵を描く力を大きくのばすことができるでしょう。
絵を描くためには自分の中のインプットを増やしてゆくことも重要です。
知らないままでは何も描くことができません。
ラフの描き方:実践例
では、実際に走る人物のラフを描いてみましょう。
こちらはわかりやすいように動画にしています。必要な説明も動画内でおこないます。
課題としては動画の中のラフの第一段階までできていればOKです。
※解説動画は音が出ます。
詳しい解説ありのロングバージョン(約3分30秒)はこちらから▼。
描き方のみの短いバージョン(Youtube short)はこちらから▼。
要点まとめ
最後に今回の要点をまとめておきます。
今回は「難しいな…」と感じた人も多いかと思います。
とりあえず、今はラフをどう描くかについて知っておくだけでも十分です。
しかし、立体的な絵を描きたいのであれば「線」から「形」へと意識を変えることが重要です。
ラフを描く時に形を考えて描くことを続けていれば、自然とものの形を見るようになります。
継続したトレーニングで必ず立体的にラフを描く意識と技術を手に入れられるはずです。
ゆっくりでよいので、立体的なラフを描くことに慣れていきましょう。
次回は人間を描く時に重要となる知識である「人体比率」、「重心と支持基底面」、「ラフのとり方」の3つについてまとめて説明してみます。
これまでの複数回の内容を要約して解説します。
それでは、また次回。
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