《初心者~初級者向け》
今回は手の描き方についてです。
▼前回記事はこちら▼
「手を描くのが苦手だ」という人は多いと思います。
実のところ、私もそうです。
AIが絵を描く時代になっていますが、AIの画像生成でも手は失敗しているケースが多いです。
骨も関節も多くて様々に動く人体の中でも特に描くのがやっかいな部位が「手」です。
手を描くのが得意ではない人は、なるべく手を描かなくてすむポーズで人を描いてしまいがちですが、それではいつまで経っても手を描けるようになりません。
手を描くには、人体と同じく比率とバランスを知ることが大切です。
手の比率とバランスをおぼえて苦手を攻略してみましょう。
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今回の授業内容と難易度
今回の主な内容です。
手を描くことが苦手な人は多いと思います。
苦手を克服するためには、手についてよく知ることです。
特に骨の構造を理解しておくことが、苦手意識を持たずに手を描くポイントです。
- 難易度 3:★★★☆☆
- 重要度 4:★★★★☆
- 画力向上度 3:★★★☆☆
手はとても難しいモチーフで、描いていてもあまり楽しくない部位ですが、顔の表情と同じくらい多彩な表現ができるパーツでもあります。
手を描く練習をはじめたばかりの頃は、いきなり難しいポーズの手を描こうとせず、まずは「パーの手」くらいの簡単なポーズからしっかりと中の骨と比率をおさえながら描いていき、慣れてきたら段階的に難しい手へと練習する対象を広げていくのがよいでしょう。
まず手の骨をおぼえよう
手を描くためには、まず骨です。
これは手の平側から見た手の骨です。
人体を描く回では骨は徐々におぼえていけば大丈夫と言いましたが、手については先にどんな骨があるのかをおぼえてしまうことがとても大切で、なにより手を描くことの近道です。
手を描きながら、自分が今どの骨の部分を描いているかを認識しておくことが大事なのです。
骨をしっかり理解していないと複雑な構造の手は描けません。
手根骨(しゅこんこつ)
手は腕の手首の先についていますが、手首とつながっている部分の硬い骨が手根骨です。
手根骨は1つの骨ではなく8個の骨の集合体です。
この手根骨から先がいわゆる「手」といわれる部分です。
8個の骨それぞれに舟状骨や三角骨などの名前がついていますが、ひとつひとつおぼえる必要はなく、まとめて手根骨とおぼえておけば大丈夫です。
ちなみに手根骨とつながる腕の骨は2本あり、親指側が橈骨、小指側が尺骨という骨です。
尺骨は手首のあたりでポコッとふくらんでいる部分(尺骨茎状突起)が目立つので小指側の骨だとおぼえやすいでしょう。
中手骨(ちゅうしゅこつ)
手根骨の先からは骨が5つに分かれます。
この5つの骨を中手骨と言います。
指のような形になってきますが、この骨はまだ手の平の中の骨です。
手の平の中にあるので「中手骨(手の中の骨)」とおぼえておくとよいでしょう。
自分の手を触ってみると手の平の中に棒状の中手骨があるのがわかると思います。
手の平は外側からみると1枚の板のような形ですが、中の構造は指のように分かれているのです。
この手の平の中で骨が分かれているということが、人間の手がとても優れた機能を持ち得た点でもあり、描くことが難しくなる原因でもあります。
骨が手の平の中で分かれていることで、人は手を「すぼめる」ことができるのです。
すぼめることで物をつまんだり、指で様々な道具を使いこなすことが可能になります。
手の平が1枚の板であったら、ここまで複雑な道具を使いこなすことはできなかったでしょう。
おそらく絵筆を持って絵を描くということもできなかったはずです。
中手骨の存在は人類社会がここまで発展してきた要因のひとつだと言えるでしょう。
基節骨(きせつこつ)
中手骨の先には基節骨という骨がついています。
この基節骨の途中から外側からも指として分かれて見える部分になります。
指の基礎となる骨なので「基節骨」とおぼえておくとよいでしょう。
中節骨(ちゅうせつこつ)
基節骨の先には中節骨という骨があります。
指の真ん中に位置する骨なので「中節骨」です。
この中節骨は他の指の骨と比べて少し特殊です。
図を見てもらえばわかると思いますが、親指だけ中節骨がありません。
親指は他の指より骨が1つ少ないのです。
末節骨(まっせつこつ)
最後に指の先端部分となる末節骨です。
指の末(先や端といった意味)にあるので末節骨です。
この末節骨は親指を含めて五指すべてに存在します。
これで手を構成する骨はすべてです。
手首側から「手根骨」「中手骨」「基節骨」「中節骨」「末節骨」の5種20個の骨でできています。
どこにどういった骨があるのかおぼえておいて下さい。
骨は手を描く練習をしながらおぼえていくのが効率がよいでしょう。
手の比率とバランスとポイント
骨の次に大切なのは、やはり比率とバランスです。
そして、手が持っているいくつかの特徴を知っておくことです。
手の平と指の比率は1:1
まず手の平と指の比率をおぼえておくとよいでしょう。
手は一番長い中指の中手骨と基節骨の関節部分(第3関節)を真ん中として指の先までと手首までが1:1のほぼ同じ比率となります。
この比率を知っておくと指が長かったり短かったりする奇妙な手を描くことを避けられます。
美しい手を描くために一番重要な比率と言えるでしょう。
横から見た手のポイント
次に横(側面)から見た手の比率とバランスも見ておきます。
手は毎日の生活で見ているものですが、それにもかかわらず意外とどういった形になっているのか知らない人がたくさんいます。
中でも横から見た手の形を正しく知らない人は少なくないです。
手を描き慣れていない人に横から見た手を描いてもらうとできあがって来るのがこういった手です。
案外と手は薄いものと考えている人が多いのです。
しかし、この薄い手を描いてしまうと手首のところで行き詰ってしまいます。
そして、そのまま薄い手首から腕へと描き進める訳にもいかず途方にくれてしまうのです。
こういったことを避けるためには、じっくりと横からの手を観察しながら、一度描いてみると形がよくわかるでしょう。
横から見た手は指先部分は薄いですが、そこから手首の方に向かうに従って太くなっていきます。
指先を1とすると親指の根本あたりの太さは3~4くらいになります。
側面の手は指先から手首にむけて徐々に太くなることをおぼえておいて下さい。
おぼえておくと良い手の特徴
その他の手の特徴も見ておきましょう。
手の指の長さ
ちょっと特殊な親指を除いた4本の指で一番長い指が中指です。
次に長い指が人差し指と薬指です。
この2本の指は個人差があり、人差し指の方が長い人もいれば、薬指の方が長い人、両方とも同じ長さという人もいます。
いずれにせよその違いはわずかですので、人差し指と薬指は同じ長さとおぼえておけばよいでしょう。
そして、4本の指の中で一番短いのが小指です。
指をそろえると小指の先端は、おおよそ薬指の第1関節のあたりに来ます。
骨の長さの違いが作り出す曲線
人差し指から小指までの4本の指の骨の数は同じですが、長さが異なります。
この骨の長さの違いが指の長さの違いを生み出しており、手に特徴的な曲線を作り出します。
この曲線は人差し指から中指にかけてあがっていき、薬指から小指にかけてなだらかに下がっていきます。
親指は中手骨から動く
手のポーズを作る時に重要なポイントですが、親指は手根骨と中手骨をつなぐ部分の関節(CM関節)が動きます。
これは他の4本の指にはない特徴です。
指を動かしてみるとわかりますが、人差し指や中指は手根骨と中手骨の関節は動きません。
親指は中節骨がなく他の4指よりも1本骨が少ないですが、関節の動くところは3か所で同じです。
間違いやすいポイント
次に勘違いしやすいポイントについてです。
これは手の平側から見た手ですが、ちょっとした罠がしこまれています。
手の平側から見ると指と手の平の境目に、いかにもここで指が曲がりそうなしわがあります。
しかし、ここは関節ではありません。
触ってみるとここには関節がないことがわかると思います。
もし、このしわの所で指が曲がるという人は基節骨が折れていますので病院に行った方がよいでしょう。
基節骨と中手骨の関節(第3関節)は手の平の中にあります。
この関節は手の甲側から観察してみるとわかりやすいでしょう。
甲側から見ると骨がでっぱっていて手の平の中に関節があるのがよくわかります。
体の他の部分との比率
手は他の体の部分を描く時の「ものさし」としても使えます。
例えば、手の長さは頭部の縦の長さの3分の2から4分の3程度になり、手を顔に当てるとあごから眉のあたりまでの長さになります。
また、前腕の長さと比べると手の長さは3分の2程度です。
こういった長さの比率を色々おぼえておくと人間を描く時に役に立つでしょう。
手の肉のつき方とラフのとり方
肉がついてボリュームがある部分を知る
手の肉(筋肉)のつき方もおさえておきましょう。
肉のつき方をおぼえておくことは手のラフを描く時にも有効です。
手の平にはそれほど大きな筋肉はなく、名前をひとつひとつおぼえる必要はありません。
どこに肉が集まってついていてボリュームが出るのかを知っておきましょう。
手の平で目立つ厚みがあるのは親指と小指のつけ根の部分です。
そして、ここは筋肉ではありませんが、人差し指から小指の根本にも脂肪の厚みがあります。
手のラフを描く時には、この手の平の3つのボリュームを意識するとよいでしょう。
手を3つに分けてラフを描く
手を描く時におすすめのラフの描き方も紹介しておきます。
より複雑な手のポーズを描くには向かないところもありますが、まず手の特徴をおぼえて手の形に慣れるためには簡単な形でラフを描いてみるのがよいでしょう。
3つのかたまりとして手をとらえる
ラフを描く時は手を3つの塊で単純化してとらえましょう。
それは「手の平」「4本の指」「親指」の3つの塊です。
まずはこの3つの塊で手の形をとらえる癖をつけましょう。
手の比率やバランスを思い出しながら、手のラフだけを描いてみるのも良い練習になるでしょう。
4本の指のことは一度忘れてもOK
手を描くことを難しくしている要因は人差し指から小指までの4本の指の存在です。
手を描く練習をはじめたばかりのころにラフを描く時は人差し指から小指までの4本の指はひとつの塊として考えてみてもよいでしょう。
この4本の指はラフを整えていく時にそれぞれ分けて描いてゆけばOKです。
手を描くことに慣れてきてから、徐々に難しい手に挑戦してみましょう。
指を描く時は円柱で
指のラフを描く時は円柱(円筒)でとらえましょう。
骨を意識しながら、短い小さな円柱で指の形を的確にとらえて描いていきます。
なお、人差し指から小指までの基節骨の長さは中節骨と末節骨を足した長さとほぼ同じになります。
この比率もおぼえておくと役に立つでしょう。
手は最良のモチーフ
最後に手は最良の練習用のモチーフです。
手はとても複雑な構造を持っていて、色々なポーズをとることができます。
様々な角度からじっくり観察しながら、たくさんの手を描いてみるとよいでしょう。
一気に10個の手を描くのではなく、1日に1つずつで良いので継続して描いてみてください。
そして、その日の手を描く時には前の日に描いた手を確認してみましょう。
何か気付くことがあれば、今日描く手にそれを反映して改良していきましょう。
要点まとめ
では、今回の要点まとめです。
手は構造が複雑で描くのが難しい部位ですが、骨と比率をおぼえて描く練習を続けていけば、やがて難しいポーズの手も見栄えよく描くことができるようになるでしょう。
優秀なAIですら、まだまだ描くのが苦手な難しい手です。
描けなくて当たり前くらいの気持ちで気楽に描き続けるのがよいでしょう。
手を描くことは絵を描く力を総合的に伸ばす練習にもなりますので頑張って描いてみて下さい。
次回は正面から見た人間の顔の描き方です。
正面から見た頭部をバランス良く描くための比率とポイントについて解説します。
それでは、また次回。
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