《初心者~初級者向け》
今回は年齢による顔の描き分け方について説明します。
▼前回の横から見た顔の描き方はこちらから
人の顔は年齢によって変化します。
これは頭蓋骨の形が成長に伴って変化するからです。
マンガやアニメではこの頭蓋骨の成長をうまく取り入れたデフォルメを使って年齢による顔の違いを表現しています。
赤ちゃんを描いても、おっさんみたいな顔になるのよね…
こういった悩みがある人は年齢差を表現するデフォルメを学んでみるとよいでしょう。
年齢による顔の特徴を知るだけでかわいらしい赤ちゃんを描けるようになるでしょう。
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今回の授業内容と難易度
それでは、今回の内容です。
今回の記事では、主に頭蓋骨の成長を取り入れた年齢による顔のパーツの配置とデフォルメ表現について説明していきます。
赤ちゃんから大人まで、頭蓋骨の変化を見ながら表現のポイントをおぼえておきましょう。
- 難易度 2:★★☆☆☆
- 重要度 3:★★★☆☆
- 画力向上度 3:★★★☆☆
特に難しい内容はありません。
年齢による顔の描き分け方を知れば、幅広い年代のキャラクターをより豊かに表現することができるようになるでしょう。
▼年齢による体の描き分け方についてはこちら▼
課題:赤ちゃんから大人までの顔を描く
最初にちょっとした課題を出しておきます。
以下のようにキャンバスを3等分し、それぞれに丸を描いて顔の方向をあらわす十字を描きます。
すべてこちらを向いている正面顔になります。
1枚に描きにくければ、3枚にわけて描いてもOKです。
3つの枠には年齢の違う人の顔をそれぞれ描いていきます。
【課題】 ※できれば同じ人物が年をとっていく意識で描いてみましょう。
- 一番左の枠に「年齢0歳~1歳の赤ちゃん(男児)」
- 真ん中の枠に「年齢10歳程度の小学生の男の子」
- 一番右の枠に「年齢30歳くらいの成人男性」
準備ができたら、丸に十字を描いたものをそれぞれの年齢の顔に仕上げてみて下さい。
頭部だけでなく、首から肩あたりまで描いておくと良いでしょう。
今回、男性としているのは男性の顔の方がデフォルメの違いが顕著に出てわかりやすいからです。
女性の顔については本文中にて解説します。
3つの課題が描けたら、以下の解説文を順に読み進めていって下さい。
変化する頭蓋骨
まず大前提として知っておいてもらいたいのは「頭蓋骨は成長する」ということです。
これは単に同じ形のものが大きくなっていく…というわけではありません。
年をとって成長するにしたがって形が変化するのです。
こちらの図を見て下さい。
出典『新編 美術解剖図譜』 東京芸術大学美術解剖学教室 編 日本出版サービス p.50
赤ちゃんから大人、老人までの頭蓋骨を比較した図です。
上段左上の「1」が産まれたばかりの赤ちゃん、下段真ん中の「5」が大人の男性の頭蓋骨です。
この図を見ると、年をとると共に頭蓋骨の形が変化しているのがよくわかると思います。
顔を描く時に明らかな年齢差を表現したいのであれば、描き手がこの頭蓋骨の形の変化を取り入れたデフォルメ表現の方法を知っている必要があるのです。
以下でこの表現のポイントを解説していきます。
人が「かわいい」と感じる顔
まず最初に「人がかわいいと感じるポイント」についてです。
「年齢の描き分けと関係ないやん」と思うかも知れませんが、意外と関係あるのです。
こちらの2つの顔の略図を見て下さい。
Bに比べて、Aの方が「かわいい」と感じないでしょうか。
人はなぜか目や鼻といった顔のパーツが真ん中の線より下にあると「かわいい」と感じます。
おそらく、これは赤ちゃんや子供の未発達な頭蓋骨では目や鼻といったパーツが頭部の下寄りに位置することにより、本能的にこういったパーツの配置を「かわいい」と認識するのでしょう。
大人にかわいいと思ってもらい保護されることで子供は生存できる機会が増えます。
子猫や子犬などもそうですね。
人間は特に動物の子供を「かわいい」と感じますが、これは人間から危害を加えられることを減らし、逆に守ってもらえるチャンスを増やす生物としての生存戦略でもあるのでしょう。
実はキャラクターも、この人間の認識の癖をうまく利用してデザインされています。
人に「かわいい」と思ってもらうことが購買意欲につながるようなキャラクターには、この特徴が取り入れられていることが多いです。
年齢を描き分けるポイントは目の位置
では、「頭蓋骨は成長する」という点と「人間が目や鼻などのパーツが真ん中の線より下にあるとかわいいと感じる」という特性を踏まえながら人の顔を年齢ごとに見ていきましょう。
赤ちゃんの顔の特徴
人間の赤ちゃんはかなり未熟な状態で産まれてきます。
生き残るためには大人の保護が不可欠です。
そのためにはかわいらしさをアピールする必要が出てきます。
赤ちゃんの絵を描く時も「かわいい」印象になるポイントを取り入れて描いていきます。
特に重要なのは「目の位置」です。
最初に目の位置を決めることで年齢による顔の描き分けが簡単にできます。
先ほどの丸に十字のラフの上に目や鼻、口といったパーツを配置していきます。
赤ちゃんの場合、これらのパーツは真ん中の線よりかなり下に配置させるのがポイントです。
これで赤ちゃんの顔のベースができあがりました。
次に赤ちゃんの顔のパーツの特徴を考えながら細部を描いていきます。
産まれたばかりの赤ちゃんは目や鼻といったパーツは特に小さいので、大きく描きすぎないようにしましょう。髪の毛などもやわらかい感じでフワッと描いておきます。
逆に顔に対して比率が大きくなるのが耳です。
耳は赤ちゃんのかわいらしさを出すポイントでもあるのですが、耳はかなり大きくなります。
これはおそらく幼く目がしっかり見えない状態では、危険を察知するのに「音」がより重要な役割を果たしているからでもあるでしょう。
赤ちゃんの目や鼻、口は小さく、耳は大きめに描くのがポイントです。
首まわりは脂肪がたくさんついていて、ほとんど首は見えません。
頭部をそのまま体にくっつけるような感じで描くのがよいでしょう。
赤ちゃんなのに、明らかな首を描いてしまうとおかしく見えてしまいます。
全体的には、まだほとんど動けないので顔も体も脂肪でプクプクして丸っこい印象です。
ただし、肩幅は小さめに。体に対して頭部の比率はとても大きくなります。
10歳の少年の顔
次に10歳の少年の顔を描いていきましょう。
赤ちゃんの頃から10年が過ぎ、体も大きく成長しました。
しかし、まだ顔にあどけなさやかわいらしさが残っている印象です。
丸に十字のラフの上のパーツの配置は赤ちゃんの頃より全体的に上にあがってきます。
しかし、真ん中のラインには達しないように注意しましょう。
真ん中のラインまで上げてしまうと、大人っぽくなり過ぎてしまいます。
目や鼻といったパーツも赤ちゃんの頃より大きく明確になってきます。
そして、なにより活発に動き回っています。赤ちゃんの頃のように脂肪はありません。
ただ体の骨や筋肉は、まだ未発達で細い感じに描くとよいでしょう。
特に首は細い印象です。
子供の首が太いとかわいらしさが十分に出ません。
大人の女性の描き方
成人女性の顔の描き方もここで説明しておきます。
大人の女性の顔を描く時には、基本的には10歳の子供の顔をベースにするのがよいでしょう。
体格的にも女性は大人でも男性に対して首が細く、肩幅もせまくなります。
10代後半~30代くらいまでの若い女性であれば、少年の時のポイントをおさえることで女性の持つかわいらしさのようなものも含めて描くことができるでしょう。
40代~60代くらいの女性を描く時には、少し目鼻のパーツの高さを成人男性に近づけてみましょう。
さらにしわを描き加えたり、髪形を年齢に応じたものに変えるなどの工夫をすればよいでしょう。
首の太さや肩幅は若い女性のものを、ほぼそのまま使ってOKです。
あまり太く広くしてしまうと男性的になってしまうので注意が必要です。
成人男性の顔
最後に大人の男性の顔です。
成人男性を描く時には目の位置はちょうど顔の中央線あたりまであがって来ます。
大人になったらかわいいと思ってもらう必要はもうありません。
ただし、この中央線より目の位置が上にならないように注意しましょう。
この線をこえてしまうと人間の顔としておかしくなってしまいます。
ラフが決まったら、細部を描いていきます。
顔のパーツは少年の頃よりもしっかり明確で大きなものになってきます。
首も太く、がっしりとした肩幅で頼りがいのある存在として描いていきましょう。
3つの顔の比較
3つの年齢の違う顔が描けたので、それぞれ比べてみましょう。
まずはパーツのベース位置だけ見てみます。
こうして比べてみると、顔におけるパーツ(特に目)の位置が年をとると共に上にあがってきているのが良くわかるかと思います。
赤ちゃんから大人までの年齢差を表現するための目の位置をおぼえておきましょう。
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▼年齢別の顔の描き分けについての解説も載っているおすすめ参考書
要点まとめ
では、今回の要点まとめです。
ここでは「人の頭蓋骨は成長と共に形が変化する」ということと「年齢差の表現は目の位置でコントロールする」ということをおぼえておいて下さい。
特に人が「かわいい」と認識する赤ちゃんや子供の顔の構造について知っておくと、かわいいキャラクターをデザインする時にも役立ちます。
次回は今回の年齢差による描き分けで取り上げなかった「お年寄り」についてです。
年齢差の描き分けにおいて、老人だけは少し特殊な規則を知る必要があります。
白髪やしわでごまかすのではなく、老人を老人らしく、なかでも90歳や100歳のすごいお年寄りをそれらしく描くための知識について学んでみましょう。
それでは、また次回。
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