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【初級者向け】パース超基礎講座⑥~1点透視から学ぶパースの基礎知識~

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【初級者向け】パース超基礎講座⑥~1点透視で学ぶパースの基礎知識~ 遠近法&背景
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《初級者向け》

前回の授業では1点透視で箱を描く方法について説明しました。

1点透視についてある程度の解説が終わったので、パースで絵を描く時に注意する点について説明する準備が出来ました。

パースについて理解すれば、それを使って絵を描きたくなりますが、なんでもかんでもパースに従って描けば良いというわけではありません。

今回はパースを使って絵を描く時の注意点について説明してゆきます。

このブログでは遠近法における「線遠近法せんえんきんほう」を中心に説明します。

線遠近法は「透視図法とうしずほう」とも呼ばれるものです。

また、これらを含めた遠近法的要素ようそを持つものを「パース」という言葉で表すこともありますが、線遠近法を除いた他の遠近法については説明する予定はありません。

当ブログで「遠近法」や「パース」という場合は「線遠近法」のことをします。

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今回の授業内容と難易度

では、今回の内容になります。

  • 位置によるものの見え方について
  • パースで絵を描く時に注意すること

今回の授業では1点透視についてある程度知っていることが前提になります。

1点透視についてよく知らないという場合は、まずこちらの授業回を読んでもらった方がより理解がしやすくなるでしょう。

  • 難易度なんいど 3:★☆☆
  • 重要度じゅうようど 4:★★★★☆
  • 画力向上度がりょくこうじょうど 3:★★

初級者向けということで難易度は少し高めですが、パースで絵を描く場合に必要となる注意点全般ぜんぱんについて説明します。

パースは便利べんりですが、知らないと思わぬ間違いを引き起こす可能性もめています。

ぜひおぼえておいて、失敗を回避かいひしましょう。

 

位置による見え方の違い

アイレベルに近いとどう見える?

まずはこちらの絵。

1点透視の箱

前回、描き方を説明した1点透視の箱です。

この箱をじっくりと観察かんさつしてみて下さい。

特に上になっている面と、そこになっている面を比べて何か気づくことはないでしょうか?

 

わかりにくいという人は、こうするとどうでしょうか?

箱を2つ重ねた図

先ほどの箱に、さらにもうひとつ同じ箱をんでみました。

2段目の箱の上の面はアイレベルと同じ高さになりましたが、1段目の箱の上の面と2段目の箱の上の面の見え方が違うのがわかるでしょうか。

1段目の箱は上の面が見えていますが、2段目の箱の上の面は見えません。

箱を2つ重ねた図(色付き)

わかりやすいように箱をさらに分割してみましょう。

箱を分割した図

アイレベルに近づけば近づくほど箱の横の面の見える範囲はんいがせまくなっているのに気づいたでしょうか。

これがパースのまり(パースの圧縮あっしゅく)です。

ものの横の面はアイレベルに近づくと見える面がせまくなっていくのです。

これはものの高さがアイレベルとそろってくる(近づいてくる)ことによって起きます。

逆にアイレベルからはなれると見える面積めんせきは広くなります。

実際に箱か何かを目の前で上げたり、下げたりして観察かんさつしてみるとよくわかるでしょう。

ちなみに観察する時のあなたの目の高さがアイレベルです。

アイレベルの上は見上げた、下は見下げた絵になる

さらに注意しておきたいのがアイレベルをはさんで上あるいは下の見え方です。

先ほどの箱の上にさらに同じ箱を2つみ上げてみましょう。すべて透明の箱です。

箱を4段重ねた図

アイレベルをこえるように2つ積みましたが、今まであった2つの箱と新しく積んだ2つの箱では見え方が変わっていることに気づいたのではないでしょうか。

箱の横の面の見え方

アイレベルより下側にあった時は箱の上の面が見えていましたが、アイレベルより上になったら今度は下の面が見えるようになりました。

アイレベルの上下による見え方の違い

カメラと同じ平面上に置かれた箱やものは、アイレベルより下にあると見下げた絵に、アイレベルより上にあると見上げた絵になります。

つまり、アイレベルより上にある時に下図のような箱は出現しないということです。

アイレベルより上にあるが見下げる感じになっている箱

この箱はアイレベルより上にありますが、箱の上の面が見える見下げた絵になっています。

※空中に浮いてかたむいているならありえますが、箱の持つ消失点は別になります。

空中にある箱

ここではアイレベルより上は見上げた絵、下は見下げた絵になるとおぼえておきましょう。

アイレベル、消失点に近い位置の見え方

ここでは箱の位置による見え方の違いを確認しておきましょう。

先ほどたてに積み上げた箱の両端りょうはしにも同じ透明の箱をみ上げてみます。

4段3列の箱

このような感じになりました。

箱の天井や床となる横の面はアイレベルに近づくと見える面積が圧縮あっしゅくされているのがわかりますが、箱の壁になるたての面(赤色の面)も「消失点を通る垂直線すいちょくせん」に近づくと同じような圧縮された見え方になっているのがわかるかと思います。

縦の面に発生する圧縮

※今回の例は1点透視で観察者(カメラ)の視中心しちゅうしん(VC)と消失点が同じところにきています。

アイレベルだけでなく消失点を通る垂直線に近づいても縦のパースが圧縮されて見えるのです。

正しいようで正しくない絵

パースは3次元を表現する便利な方法ですが、ただそのままパースに従って描けばよいという訳ではありません。

パースに従って描いた結果、間違っているということもありえます。

パースに合っていてもおかしく見える例

前項ぜんこうでアイレベルや消失点に近づくとしょうじるパースの圧縮あっしゅくについて説明しましたが、これを知らずにただパースに従って絵を描いているだけだとどんなことが起こるでしょうか?

例えばこちらの絵です。

奇妙なベンチ

ベンチを描いたものですが、何かおかしいことに気づくでしょうか。

パースだけで見ると、ちゃんとパース線にも合っていて正しいように見えます。

つまり、透視図法とうしずほう的には間違っているわけではありません。

しかし、この絵はパースの圧縮あっしゅくやベンチの形をよく考えず描かれているので、人が座るイスの座面ざめんがとても奥行きがあるように見えてしまいます。これではまるでベッドのようです。

形の確認

アイレベルに近いのに座面が見えすぎてしまっているのです。

ベンチの奥行き

パースは2次元のキャンバスに3次元を擬似的ぎじてきに表現する手段なので、描こうと思えば実物じつぶつ無視むししてどのような形でも描けてしまうのです。

しっかりと正しい奥行きを求めてまで描く必要はないですが、デッサン的におかしくない形かどうかを判断はんだんして描くようにしましょう。

先ほどのベンチを人が使える形に修正してみるとこんな感じになるでしょうか。

修正したベンチ

最初のベンチも修正したベンチもパースラインにはしっかり合っていましたが、最初のベンチは「人が使える形か?」「一般的な形になっているか?」「アイレベルに対してこの位置の座面はどう見えるか?」という考えがありませんでした。

2つのベンチの比較

パースに合っていても絵としてはおかしいというケースはよくあります。

パースを使う場合は「パースの圧縮」を理解りかいした上で、今描いているものが実際にあるものと比べて正しい形なのかを判断する知識も必要になってくるのです。

ここではパースに従って描けば必ず正解せいかいの絵になるとはかぎらないということをおぼえておいて下さい。

正しいけれどゆがむパース

パースでは描こうと思えば、3次元的におかしなものも描けてしまうという話をしましたので、もうひとつ関係かんけいする話をしておきます。

人間(カメラ)には映像えいぞうをとらえることができる範囲はんい(視円錐しえんすい)が決まっています。

人間の見える範囲

つまり見ることができる範囲がきまっているのですが、絵では大きなキャンバスさえあれば、どこまでもパースを使って絵が描けてしまいます。

本来は頭や体をそちらに向けなければ見えないものも絵なら描けてしまうのです。

これが思わぬ間違いを引き起こすことがあります。

1点透視の箱で説明するとこのような感じです。

60度視野角内と視野角外での見え方の比較図
60度視野角内(白抜き部分)の青の箱はゆがみが少ないが、視野角外にある赤の箱はゆがみが目立つ

真ん中あたりにある箱はおかしく見えないと思いますが、はしの方にある箱は側面そくめんびたように見え、ゆがんでいるのがわかるかと思います。

実際、この端の方の箱は頭や目をそちらに向けないと人間の視野しやには入ってこないのですが、絵には視野の限界がないので、そのまま1点透視でひたすら描けてしまうのです。

人間の視界の限界

ちなみに、このように視野の外にある箱を描くためには人間の頭やカメラをそちらにむけたと想定そうていして箱を2点透視で描くことになります。

そちらを向かないと箱は見えない

パースのルールとしては正しいのに、その状態では絶対に見えないものまで絵では描けてしまうことからこういったことが起きてしまいます。

2次元のキャンバスに3次元を表現するパースではこういったゆがみが色んなところで生じます。

1点透視で絵を描く場合は人間やカメラの映像をとらえる範囲はんいをよく意識するようにしましょう。

1点透視の絵の消失点は1つだけ?

最後にこちらの絵についてです。

ならんだ2つの箱

1点透視の絵ですが、箱が画面内にふたつ置いてあります。

パッと見た感じでは普通の1点透視の絵のように見えるかと思います。

しかし、パース線を引いてみるとこの2つの箱は別々の消失点を持っていることがわかります。

2つの箱(パース線あり)

はたして、この絵のようなことは透視図法とうしずほうとしてありえるのでしょうか?

 

答えは「ありえる」です。

1点透視で消失点を1つ決めて絵を描きはじめると、ひたすらその消失点に従って描いていかないといけないように勘違かんちがいしがちなのですが、実はそのようなことはありません。

ひとつの絵の中に別の消失点を持つ物体がまざっても問題ないのです。

(※正確に言えば右側の箱は平行パースにならず2点透視で描くことになるでしょう)

それどころか1点透視の絵の中に2点透視の物体がまざっていてもOKです。

今回の絵で考えてみましょう。

最初は2つの箱がきちんとならんで置いておいてあったとします。

ならんで置いてある2つの箱

しかし、そこに誰かがぶつかって片方の箱が少し動いてしまうこともあるでしょう。その場合、箱の消失点も動くのです。

右の箱が動いた状態

なので、例として出した絵のような状態じょうたいは普通にありえるのです。

ぶつかり方が大きくて、カメラに対して箱に角度がついてしまうと2点透視で描くことになります。

1点透視と2点透視の混在
2点透視の箱の2つ目の消失点であるVP4は右の画面外に存在する

このように1点透視で描き始めた絵の中に2点透視のものがざっても問題はありません。

肝心かんじんなのは同じ平面上に置かれている物を描く時は同じEL上に消失点をとるということです。

言いかえればELは消失点が集まって線になったものと言ってもよいかも知れません。

消失点は対象たいしょうがカメラに対してどう見えるかを考えて決めるとよいでしょう。

要点まとめ

では、最後に要点をまとめておきます。

  • アイレベルに近づくとパースが圧縮あっしゅくされる
  • アイレベルより上は見上げる構図、下は見下げる構図になる
  • パースに従って描くだけではなく、パースの特性も理解しておく
  • 絵を描く時の消失点は複数あってもよい

パースで絵を描くには単にパース線に従って描いても間違った絵を描いてしまうことがあります。

パースを使いこなすには「こう描くとどうなるか」「この場合はどう描かなくてはならないか」ということについてもしっかり意識して描く必要があります。

ただ、やみくもにパースに従って描けば良いという訳ではないとおぼえておいて下さい。

パースでは「何をしたらいけないか」ということを知っておくことも大切です。

 

次回は実践じっせん編としてパースの知識や技術を活用かつようして、1点透視で部屋を描いてみます。

箱が描ければパース上に色々なものを描けるようになりますが、部屋のような現実にある空間くうかんを描いてみることで気づくことがたくさんあるでしょう。

実際じっさいに箱を使って部屋を描きながら、様々な注意点についても説明してゆきます。

それでは、また次回。

 

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