今回は絵を描く力のランクについて考えてみます。
つまり、学習やトレーニングによって絵を描く力がどのような段階を踏んで、どのように成長していくのかということです。
今回の内容は20年以上絵を描く世界に身を置いてきた私の個人的な考えや感覚に基づくものです。
たくさんの絵を描く人間と関わってきた経験から述べるものですが、なんら科学的な検証や調査に拠ったものではないことをはじめに了解しておいて下さい。
軽い読み物感覚で読んでもらうのが良いかと思います。
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絵を描く才能は2種類
絵を描くことはスキルなので、どうしても上手い下手が出てきます。
子供の頃は周りの目など気にせず好きな絵を自信を持って描いていたはずなのですが、いつの頃からか人は自分の描いた絵の自己評価や他者評価を気にするようになります。
つまり、自分の描く絵は「上手いか、下手か」ということが気になってきます。
画力を上げるためには継続的な練習と学習が必要になってはくるのですが、絵を描く人間には実のところ2種類の異なった才能を持った人が存在すると考えています。
そして、どちらの種類の才能を持っているかで、絵との関わり方が大きく変わってきます。
ひとつは普通の才能の持ち主、いわゆる一般の人です。
絵を描くにあたっても、スポーツや語学のような他の技術習得と同じように継続したトレーニングをくり返しながら、段階を踏んでより高度な技術の獲得を目指していくことになります。
一般人でもこのやり方である程度までは絵を描く力を伸ばしていくことが可能で、プロの漫画家やアニメーター、イラストレーターとして活躍している人もたくさんいます。
もうひとつは特殊能力者とも呼ぶべき特別な才能の持ち主です。
絵の世界には数は多くないですが、明らかに神に愛された才能の持ち主が存在します。
これは頭の良さや優れた運動神経などといった生まれながらの能力のひとつなので、後天的な努力の積み重ねではこの壁を越えていくことはできません。
地球人がスーパーサイヤ人になれないように、ここは一般人では到達できない領域です。
こういった特別な能力を持つ人たちも、もちろん画力を上げる努力はしています。
しかし、一般人が苦悩しながら少しずつ絵を描く力を上げていく努力を続ける必要があるのに対し、この人たちはこの行動に対して「努力している」という認識自体がうすく、好奇心に従った観察などを通して獲得した大量の情報を絵として再現できてしまいます。
しかもその再現は抜群のセンスによって再構成されたものなので、らくがき程度の習作であっても多くの人を魅了する優れた作品として成立してしまいます。
絵を描くことにおいては、もはやチートレベルの存在だと言えます。
我々、一般人は地上からそのお姿や偉大な業績をただながめるのみです。
しかし、別に不公平なわけではありません。
こういった人は生まれる時の能力値のパラメーター配分を画力に多く割り振っただけです。
生物としてのバランスをとるため、すごい絵が描けるけれどもとび箱は3段も飛べない…というようなことになっていたりします。
はたしてあなたはどちらの才能を持ち合わせているでしょうか。
画力ヒエラルキー
画力のヒエラルキーの概念を図示してみます。
こちらの図は経験に基づきつつも、私の独断と偏見によって作成したものです。
さらに、この階層図は絵を描く力のみで考えています。
特にマンガやアニメは絵を描く力の他にも創造性やストーリー性などといった要素も含めた「作品」としての総合評価となるので、絵が上手い=すごい漫画家とはなりません。
画力は多少つたなくても、そのストーリー性や世界観、コマ割りやキャラクターデザインの魅力によって大ヒット漫画家となった人がたくさんいることは周知の事実でしょう。
この図は絵を描く才能と、その成長の伸びを考える際の参考程度に見てもらうのが良いでしょう。
まず、普通の人が絵を描きはじめたとしたら、ほとんどの場合「超初心者クラス」からスタートすることになります。
ここから学習と練習を重ねてひとつひとつランクをあげていくことになります。
この普通の人が画力を伸ばすために肝心なことは継続です。
描き続けてさえいれば画力は少しずつあがっていきますし、ライバルはあきらめて舞台上から去っていきますので、結果として絵が描ける人材としての希少性も増してきます。
普通の人でも努力次第では「熟練者クラス」までランクをあげることができるでしょう。
このクラスに到達できれば、その上の能力者たちにも対抗することが可能となるはずです。
次に、特殊能力を持つ人たちは自分の才能に気づいて絵を描きはじめさえすれば、すぐに「上級能力者クラス」に入ることができるでしょう。
能力者にとって肝心なポイントは自分の持つ絵の才能に気づくことです。
才能に気づかずコツコツと別の仕事をしているというもったいないケースもあるでしょう。
能力者のクラスは生まれながらに決まっているので、上のランクへの昇格は基本的にないものと考えますが、運とタイミングによっては上がっていくこともあるでしょう。
例えば、能力者は皇族や王族として生まれついたような人たちです。
自身の強運や人との出会い、そしてタイミングによっては皇帝や王として即位して人の上に君臨する資格を生まれながらに有している特別な存在だということです。
本当にうらやましい限りです。
以下では各ランクの詳細を考えていきます。
絵を描かない人たち Non-draw
日本の人口の大半は絵を描かない人たちです。
この人たちも今回のランク表の中に入れてはいますが、絵を描くことはないので厳密には画力ヒエラルキーの外にいる存在であると言えます。
絵を描かないので絵を描くことについて悩むことはありません。
日本の人口で考えるなら、この人たちだけで1億2000万人以上に達するでしょう。
これに対し、継続して絵を描いている人口は100万人から100数十万人くらいにしかならないでしょう。
そう考えると絵についての勉強や技術習得に少し取り組むだけで、日本の人口の上位1%以内にランクインできるということです。
「超初心者クラス」でも100分の1以下のレアな存在となれるのです。
日本の大多数の人は絵を描いていないということを知っておくことは、絵を描き続けるモチベーションを保つ上でかなり重要な気づきとなるはずです。
この気づきのために絵を描かない人たちも表の中に入れています。
無関心層 Indifference
推定人数:7500万人~8000万人。 ※人数は日本国内における筆者の勝手な推定
「絵を描く」ということに特段の興味を示さない人たちです。
年齢層は比較的高めで、すでに自らの仕事や趣味を持っています。
マンガやアニメなども世間的に流行しているものには目を通したりするものの、毎シーズン見るアニメを決めて視聴したり、マンガを定期購読するような行動はとりません。
生活の中で簡単な地図や説明図などを描くことはありますが、この行為について「絵を描いている」という認識を持つこともありません。
自分のことを「絵が描けない」と自覚していることが多く、他の人が描く絵の上手い下手にもそれほど興味関心を示しません。
しかし、ここから特定のマンガやアニメにはまったりしてユーザー層へと移っていく人もいます。
ユーザー層 User
推定人数:4000万人~4500万人。
マンガやアニメなどで創作された世界観やキャラクターに興味関心を示す層。
クリエイティブ側にとっては、積極的に作品に接触してくれる大切なお客さんです。
ライトユーザーからヘビーユーザーまで作品への関わり方は様々です。
「絵を描きたいな…」と思うことはあっても基本的には見ることで満足しており、自ら積極的に絵筆をとって絵を描くという行動に出ることはありません。
自分のことは「絵が描けない人間だ」と思っていますが、絵には強い興味関心があるので、他人の描いた絵の批評は積極的におこなうこともあります。
若年層のユーザーを中心にこの立場から絵を描く側へと移行していく人も多くいます。
超初心者 Novice
推定人数:50~100万人。
絵を描くということをはじめてしまった人たちです。
このレベルから画力ヒエラルキーに組み込まれていくことになります。
参加が多い反面、離脱していく人たちも非常に多いクラスで常に流動しています。
絵を描いている期間は数か月程度で、好きな絵を時々まねして描くといった程度です。
10代くらいの若年層が多く、自分自身で何らかのの絵を完成させる技術にはまだ乏しく、描く対象もマンガやアニメのキャラクターの顔だけといったことがほとんどで、背景などを組み合わせて描く技術もまだ持っていません。
美術の専門教育を受けるつもりも予定もありませんが、「絵が上手くなりたい」という希望は持っており、機会があれば効果的なトレーニングを受けたいと思っているでしょう。
思ったような絵が描けないという理想と現実を目の当たりにして、絵を描くことをあきらめてしまう脱落者が一番多いのもこのクラスです。
初心者 Beginner
推定人数:約30万人。
すでに日常的に絵を描いている人たちです。
絵を描いている期間は半年から1年程度といったところでしょうか。
個人的にマンガやアニメの絵などを模写したり、トレースしたりした経験を有し、場合によっては自分自身のオリジナルのイラストやマンガを見よう見まねで描いたりすることもあるでしょう。
しかし、これまでに専門的な美術教育を受けた経験はほとんどなく、趣味の範囲を出ない自己流の描き方となっていて、絵を描く知識や技術はまだまだ不足しています。
絵が上手くなりたいという欲求は強く持っているので、画力を向上させるための情報を得るため積極的にネットや書籍にアクセスしていきます。
初級者 Apprentice
推定人数:約10万人。
絵を描く学習と努力を1年以上継続できると初級者レベルに到達しているでしょう。
ある程度の絵を描くための知識や技術も習得できていると思います。
学校や画塾で専門的に絵を学んでいたり、あるいはその経験を有しているかも知れません。
絵を描く知識や技術は不足しているところもありますが、絵を描かない人たちからは「絵が上手い」と評価されることが多いでしょう。
ただ、このクラスから伸び悩む人も出てきます。
描いても描いても画力が上がらないという人が出てきますが、成長が遅いだけで着実に中級への道を歩んでいることは理解しておきましょう。
しかし、その状況におちいると多くの人が描くことが嫌になってやめてしまいます。
ここであきらめずに描き続けた人が中級者へとステップアップすることができ、ライバルも減っているので絵を描くことを仕事にできるチャンスも広がって来ます。
このあたりのクラスから、ちらほらと絵を描くことでお金を稼いでいる人が現れます。
中級者 Intermediate
推定人数:約3~5万人。
絵に関する知識や技術をひと通り習得した人たち、あるいは我流でも必要な絵を描き切るだけの力を有している人たちです。
このクラスに到達するまでの期間は個人が持つ才能や学習の方法などにも左右されますが、目安としてはおよそ3〜5年、人によっては10年以上の継続した努力が求められるでしょう。
これまでの努力の成果として、要求された絵はとりあえず何でもそつなく描くことができるようになっています。
人物や他のオブジェクト、背景といった多重のレイヤーで構成された複雑な画面も、しっかりと理解しながら描いていける力を持っています。
このクラスには漫画家やアニメーター、イラストレーターとして活躍している人も多くいます。
熟練者 Master
推定人数:約5000~1万人。
絵を描く特別な才能を持たない一般人が到達できる最高位です。
数十年に渡る長い期間、絵を描くことに対する不断の努力を続けてきた人のみがたどり着けるクラスで、その努力はこのランクに達した後も常に継続されています。
まさにマスタークラスと呼ぶにふさわしい人たちです。
この人たちが描く絵は、しっかりとした根拠と経験に基づいて描かれているので、より上級の能力者クラスを含めた世間の誰からも「上手い」という評価を勝ち取ることができます。
絵を描くための知識や経験が豊富な上、獲得した技術を言語化できるので後進の指導も可能です。
特別な才能に恵まれた「能力者クラス」に対抗できる可能性を持つ唯一の一般人クラスです。
マンガやアニメ、イラストなどの商業面で成功している人も多数います。
上級能力者 Innate talent
推定人数:約1000人。
絵を描くための特別な能力とセンスを有した人たちです。
このクラスから上は一般人では到達ができない領域となります。
ほんの少しの努力や学習によって絵を自由自在に描くことができるようになる人たちです。
元々絵を描くための素晴らしい才能を持っているのですが、それに加えて本人たちは「努力している」という認識すら持たずに絵を描くための向上を日常的に続けることができます。
さらにその行動がもたらす画力の向上効果は一般人の同じ量の努力の数倍~数十倍にもなるので、もはや一般の人間では対抗することがほぼ不可能です。
このクラスより上の人たちは自分の描く絵に何らの疑問も持つことなく、描き上げる絵に絶対の自信を持っています。
また、他者による評価を気にすることもなく、それによって描く絵がブレることもありません。
特級能力者 Special talent
推定人数:約10人。
まさに天賦の才の持ち主。
絵を描くことに特化した特殊なセンスを持つ人たちです。
努力やその期間は人によってまちまちでしょうが、このクラスになると「絵を描くための努力」というものが全く必要ない人も存在したりします。
何かを見た時点ですべてを了解して、そのまま、あるいは独自のアレンジを加えて絵として表現することができる能力を備えたレベルです。
このクラスは新しい表現手法を生み出して、その時代をリードしていきます。
神の使い God-given talent
推定人数:0~1人。
まさに神によって選ばれし奇跡の人。
特級能力者の突然変異ともいうべき存在で、絵を描くことだけでなくそれ以外の創作活動においても天才的な業績を残すことができるでしょう。
特級能力者の中でも特別な運とタイミングに恵まれた人です。
その活動は国家の政治や宗教、経済などにも大きな影響を及ぼすレベルです。
人類の歴史にも長らく名前が残ることになるでしょう。
おわりに
戯言のような記事を読んでもらってありがとうございました。
絵を描いていると「マジか⁉」と思うような優れた才能の持ち主に出会うことがあります。
今はSNSなど作品を発表する場も広がってきていますので、自分と同年代くらいのそういった10万人に1人の特別な才能の持ち主を見かける機会も増えていると思います。
もし、一般的な才能しか持っていないのであれば、自分の実力とのギャップにかなりショックを受けて、気分が落ち込んでしまうかも知れません。
しかし、10万人に1人の煌びやかな才能を見て羨んだり、落ち込んだりしても意味はありません。
そのような時は「スーパーサイヤ人がいるな…」とながめるくらいにしておきましょう。
決して自分と比較したり、対抗しようなどとは思わないことです。
下手に頑張ってしまうと自分自身を壊すことになってしまいます。
他人は他人、自分は自分です。
自分自身の技術や知識を向上させていくための行動を地道に続けるべきです。
1年前の自分より1年後の自分が成長していればそれで良いのです。
他人と比較せずに過去の自分と比較しましょう。
とにかく画力を伸ばしたいなら続けることです。
描き続け、学び続けることです。
あきらめずに続けることが何よりも大切です。
我々のような一般の人間が絵の世界で生きていくにはそれしか方法がありません。
そして、自分が10万人に1人の特別な才能の持ち主であった人はおめでとうございます。
目で見たものを何の苦も無く、そのまま写真のように絵として描写することができるようであれば、あなたの中には特別な才能が眠っている可能性が高いです。
すぐにその貴重な才能を上手く活用していく取り組みをはじめてみましょう。
まずは自分の作品を発表して、あなたという存在を世間に知ってもらいましょう。
あなたはその才能を使って十分に食べていくことができるはずです。
と、いうところで今回はここまでです。
普通の才能であったとしてもがっかりする必要は全くありません。
むしろ普通の才能の上に努力を積み重ねて活躍している人の方が圧倒的に多数です。
今回の記事が絵を描く努力を続けていく時の指標のひとつにでもなれば幸いです。
次回は普通の人がなるべく効率的に画力を伸ばす方法について考えてみます。
それでは、また次回。
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